闇のリズム的山羊座の誕生日・二年目



「……何ですか、これは?」


帰宅するなり、目の前にズイッと差し出された紙袋。
いつもの無表情でありながら、切れ長の瞳の奥に期待の色がありありと浮かんでいるところを見れば、それが例によって『とんでもないもの』である事は目に見えている。
それを裏付けるように返ってきた、シュラ様からの返事。


「アンヌから俺への誕生日プレゼントだ。」
「プレゼントなら、他のものを用意してます。」
「別に一つだけとは決まってないだろ。プレゼントなら幾つ贈っても良い筈だ。」


そう言って、シュラ様は半ば無理矢理に、私の手に紙袋の取っ手を握らせた。
私から彼へのプレゼントだと言っておきながら、彼が私にものを渡すという事は、つまり中身はいつもの『アレ』で間違いないという事。
ほぼ紐とレースだけの面積のちっちゃな下着とか、クリスマスの透け透けサンタベビードールみたいなものとか、そんな感じで際どいアレばかり。
ハッキリ言って、もうその攻撃にはうんざりなんです。


「シュラ様がお好きそうな下着なら、ぜっっっったいに着ませんから。」
「やけに強調系だな。だが、大丈夫だ。下着ではない。中を見れば分かる。」
「え……?」


言われて紙袋の中身を覗き込む。
見えるのは、たっぷりとした生地。
シルクだろうか?
布の大きさを考えると、間違いなく下着ではない。


「納得したか、アンヌ? なら着替えて来い。」
「今直ぐですか?」
「勿論。あぁ、下に下着は着けるなよ。」
「は?」
「良いから、早く行け。」


シュラ様に急かされ、渋々、部屋へと着替えに行く。
言われるままに、下着を着けずに、その服を着てみたものの、直ぐに激しい後悔に襲われた。
し、下着を着けるなの意味が分かりましたよ、そういう事だったんですね!


「遅いぞ、着替え程度で何分掛かっている。」
「きゃっ、シュラ様っ?!」


ノックもなしに部屋に入ってきたかと思えば、着替え終わった私の姿を見て、ニンマリと目を細めるシュラ様。
考えている事が丸分かりなんですけど!
もう嫌!
本当に嫌!


「何故、手で隠す?」
「だ、だって、この服……。」


確かに布地はたっぷり足首近くまであるし、縫製もしっかりしている。
生地も本物のシルクで上質のもの。
だけど、だけど!
この、とんでもなく上まで入ったスリット、腰骨の辺りまであるんですけど!
首や項は隠れているのに、何で胸の前だけこんなに開いているんですか?!
しかも、恐ろしいくらいに身体にフィットしていて、手で覆わないと胸の先端辺りがプックリと……。


「思った通りだ。アンヌはチャイナドレスも良く似合う。早くその手をどけろ。」
「嫌です、絶対に嫌です。大体、何処でこんな服を買ってきたのですか?」


にじり寄るシュラ様から逃げるように後退りしつつ、質問を投げ掛ける。
何とか彼の意識を、この姿から逸らそうと、試みる私。
じゃなと、今にも押し倒されそうなんですもの!
都合の良い事に、背後にはベッドもある事だし!


「何処って、老師に教えていただいた。」
「はぁ?!」


あの童虎様が、こんな危険なお洋服を売っているお店を?!
シュラ様に何というものを教えちゃってるんですか?!
恨みます、本気で恨みます、童虎様!


「本当にアンヌは何を着ても似合う。そして、俺の欲望をピンポイントで刺激してくれる。今夜は最高に楽しめそうだな。」


そう言って、ギラつく瞳を細めたまま、コクリと喉を鳴らしたシュラ様。
ピンポイントで欲望を刺激するって、自分でそうなるものを選んでるんじゃないですか?!
まるで肉食動物を思わせる視線で、私の身体を頭の上から足の先まで舐めるように眺める彼の口元の笑みを見て、私はこれから朝まで続くだろう激しいバトルを覚悟したのだった。



‐end‐





01.12 HAPPY BIRTHDAY シュラ!
2013年も変態暴走上等な山羊さまで申し訳ない^^;
多分、この夜は着衣EROで間違いないと思いますw

2013.01.12



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