一方的決め付け恋愛7



寝苦しくて目が覚めた。
いや、寝苦しいというよりも、就寝中の身体に掛かるには有り得ない大きさの圧迫感に襲われた。
というのが正しいと思う。
息苦しくて、そして、身動ぎすら自由に出来なくて。
それまで、ふわふわと心地良い夢の中に浸っていたのが嘘のように、一方的に現実世界へと引き戻されてしまう。


「う、はぁっ……。」


目覚めたと同時、呼吸困難になり掛けた一歩手前で、荒い息を吐く。
だが、息を吐いたところで、この圧迫感は消える事はない。
それどころか、徐々に力を増して、私を押し潰してくるような感覚。
私は声にならない乱呼吸を繰り返しながら、暗闇の中、目を凝らした。
ぼんやりと浮かぶ人影、人の顔。
それも、驚く程の至近距離、頬と頬が擦れ合いそうなくらい近くに、誰かがいた。


「や、あ……、だ、誰? うあっ!」


何とか声を絞り出すと、それに呼応するように強まる圧迫感。
そして、理解する。
身体を押し潰し、苦しいまでの圧迫感を与えているもの。
私の上に圧し掛かっている、この男の人が、私の深い深い場所へと進入してきていたのだ。
じわりじわりと身体を割り開き、私自身も触れる事の出来ない最も奥深く目指して。


「や、あっ! だ、駄目っ! あ、誰、ですか、貴方はっ! あ、ああっ!」
「…………。」


問い質しても答えは返ってこない。
それどころか、答えは『コレ』だとでも言いたげに、更に力を籠めて沈み込んでくる、熱いまでの質量を伴って。
私は声にならない掠れた悲鳴を上げた。
その仰け反った首筋に、噛み付くようなキスを施され、身体がビクリと跳ね上がった。
まさか、デスマスク様以外の人に、こんな事をされるなんて……。
悲しくて辛くて、そして、悔しかった。
焼け付くような熱さを感じながら、じわり、涙が零れ落ちそうになる。


これも全ては、ドアに鍵を掛けなかった自分の責だ。
まさか、この聖域で、十二宮の内部の部屋に進入しようとする輩がいるなんて、考えもしなかったから。
デスマスク様が留守であるとはいえ、後々、進入した事がバレてしまえば、どんな厳罰を受けるか。
相手が彼であれば確実に黄泉の国送りになる。
そうと分かっているから、進入者なんて絶対に有りはしない。
恋人の私に手を出すなんて有り得ない事だと、そう思い込んでいた自分の迂闊さを激しく悔やんだ。


でも、こうなってしまったからには、もう遅い。
デス様のベッドの上で、デス様以外の人に身体を奪われ、私はそれを最後まで堪え切るしかないのだ。


「う、くっ……、あ……。」
「何、声殺してンだよ?」
「っ?!」


この声……、デス、マスク様?
でも、彼は任務に出ていて、戻りはまだ数日先の筈。
幻聴?
聞き間違い?
デス様以外の人になど触れられたくないと、そんな思いの強さで、彼の声のように聞こえてしまったの?


「だから、無理に堪えンなって、アディス。いっつも、もっとエロい声上げてンだろが、あ? 俺の身体に縋り付いて、ねちっこく快楽を貪ってンだろ。いつもみたいにヤれよ。」
「あ、やだ……。ホント、に……、デス、様? あ、あああっ!」
「お、やっとイイ声、上げたな。」


暗闇の中、ニヤリと歪んだ口元から、白い歯が煌めいた。
あぁ、良かった。
デスマスク様だったのだ。
他の誰でもなく、私が唯一、全てを預け、全てを晒け出せる相手。
例え、無理矢理であっても、私を奪ったのがデス様であれば、何の憂いもない。
あるのはただ、洪水のように襲いくる深い快楽だけ。


「あっ、んんっ! そ、そんな急に激しくしちゃ……、あっ、駄目っ!」
「駄目じゃなくて、イイんだろ? アディス、オマエ、今にもイきそうな顔してンぞ。」
「嘘……、あっ。こんな暗くちゃ……、あんっ。み、見えないでしょ……、ん、ああっ!」
「俺なら、もう闇に目が慣れちまってるから、アディスのエロい顔は丸分かりだぜ?」


圧し掛かっていた相手がデス様だと、私が認めたと同時。
それまでゆっくり沈むだけだった熱く滾った彼自身が、動きを変えた。
どれ程に我慢していたのか、途端に力強く、そして、性急に擦り上げ、突き、味わい出す。
深く心地良い場所を打たれる度に、暗い闇が広がる天井に、目映い光の花が咲いてみえた。





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