互いの心も身体も浮かされた熱から解放された頃には、時刻は真夜中になっていた。
嘘みたいに燃え上がった身体は、いつも以上の壮絶な快感をもたらし、私達を何処までも追い詰めて。
数度に渡る濃厚な行為の果てに、やっと満足を得たデスと私は、漸くとばかりにベッドに沈み込んだ。
「今度、聖域に行かねぇか?」
「聖域? どうしてまた?」
「六年振りだろ。タマには里帰りも良いンじゃねぇのか?」
「里帰りって言っても、親がいるワケじゃないし。」
言い返そうとする私の言葉を、強引にキスで塞いで奪うデス。
こういう時は、そう。
「何かをしないか?」と聞きつつも、それは既に決定事項なのだ。
だから、こうして私に反対する隙を与えないつもり。
「嬢ちゃんがよぉ、ミカに会ってみてぇンだと。」
「アテナが、私に? 何でまた?」
「俺が知るかよ。嬢ちゃんが言うに、『俺みてぇな男と長年付き合ってるボランティア精神の旺盛な女』ってのを、一度、見てみたいンだとよ。」
「ボランティアって……。私はそんなに立派な女じゃないけど。ただ単にデスが好きなだけ。」
「……スキ?」
「ん? あ、違った。『デスを愛してるだけ。』だったわね。」
ニヤリと浮かべた笑みで、いつものデスに戻っていると分かった。
自信過剰で、自己中で、俺様で、態度が大きくて。
でも、心が深くて、実は優しいデス。
「それだけじゃないでしょ?」
「あ、何が?」
「ずっと態度がおかしかった理由。私を聖域に連れ帰るくらいじゃ、そんなに迷わないと思うけど。」
「あー、そっちか。」
ポツポツと紡がれるデスの話に、私は驚くばかりだった。
何でも彼の親友――、といえばシュラさんかアフロディーテさんなんだけど、その親友が恋人の女性にプロポーズしたらしい。
付き合ってまだ日は浅いけれど、既に一緒に住んでいるし、相性も良くて、何より彼はその人の事をとても愛していたから、と。
でも、あっさりと断られたらしく、挙句、「結婚は望んでいないの。恋人だから良いのよ。」と告げられて。
そう、彼が彼女を想っている程に、彼女は彼を想っていなかったのだ。
ココまで話を聞いて、何となくそれはシュラさんの方だろうなと、落ち込む彼の姿を勝手に想像しながら、心の中で同情する。
まさか黄金聖闘士を相手に、そんな事を言える女性がいるなんて思いもしなかったわ。
彼等の恋愛は、いつも百パーセント成就するものだと思い込んでいたから。
「……で、自分も心配になったと、そういうワケね。」
「別にそうじゃねぇよ。」
「嘘、そうに決まってる。急に『愛してる』なんて言わせようとして。」
クスクスと笑いながら伸ばした手で髪を撫でると、その手を払ってゴロリと向きを変えたデス。
不貞腐れたように私に背中をみせて、寝た振りを始める姿が、どうしようもなく大きな子供みたいで。
でも、そんな甘えた仕草をみせるのも私にだけ。
胸の奥で膨らむ愛しさに逆らわず、私はそっと、その大きな背中に寄り添った。
六年目の告白
スキよりもアイシテル
「ミカ……。やっぱ、もう一回。」
「ちょっと、もうヤダ! 無理よ、無理っ!」
重たい身体が圧し掛かってきて、圧倒的な力で再び組み敷かれる。
直ぐに、こうして甘さを掻き消してくれるのも、また彼らしいのよね。
‐end‐
最初は二ページの予定だったのに、ズルズルと長くなってこんな事に。
蟹誕前に書き始めて、出来上がったら七月になってましたorz
とりあえずシチリアヒロインさんとは、普段は言い合い・罵り合いが日常の、夫婦みたいな関係なのに、時々、非常に糖度が高くなるっていうのが基本コンセプトです。
格好付けで弱さとか死んでも見せないデスさんが、このヒロインさんにだけは甘えたり弱い部分を見せたりするのが、激しく萌え。
心許し合える関係が良いですよね、でも、依存し過ぎない勝気なヒロインさんが気に入ってます。
という訳で薄っすらお気付きの方もいると思いますが、聖域帰省編に続きます(笑)
蟹様、お誕生日おめでとうでした!
2010.07.03