14.パパ孝行



ぎゅっ、ぎゅっ。
むぎゅっ、むぎゅっ。


「あ〜、そこそこ。気持ちイイわ〜。」
「でちちゃま、ココ?」
「お〜、そこそこ。グリグリッてしてくれ。」
「グリグリ〜。」


シュラに付き合わされた今日の聖闘士候補生達への戦闘指導。
俺は横からあーだこーだと口を挟むだけで済まそうと思っていたンだが、何やら突然、熱血のスイッチが入っちまったシュラによって無理矢理に模擬戦の相手をさせられ、身体中がバッキバキに凝り固まっちまった。
アイツ、手加減しねぇモンなぁ……、ただの模擬戦だってのに。
てなワケで、先日アイラから貰った『背中踏み踏み券』を早速、使わせてもらってるって事だ。


「おせなか、ふみ、ふみ……。」
「アイラ、もうちょっと下。」
「した? おしり?」
「そー、尻。尻が痛ぇンだわ。」
「でちちゃまのおしり、ふみ、ふみ〜。」
「……何をしているんだ、これは?」


そンなマッサージの真っ最中、本日の執務を終えて双児宮へと戻る途中に立ち寄ったサガが姿を現した。
丁度、アイラが俺の尻を集中的にグリグリ踏ンでる時だ。
床に寝そべる俺と、その俺をむぎゅむぎゅと踏み付けながら歩くアイラとを交互に眺め、サガは戸惑いの表情を浮かべている。
そんなサガの困惑を余所に、アイラは俺の背中に乗ったまま、ヤツに向かって大きく手を振った。


「しゃがたま、こんばんはなの。」
「……あ、あぁ。こんばんは、アイラ。しかし、これは一体、どういう事だ?」
「マッサージなの。ふみふみマッサージ。」
「マッサージ……?」


アイラのたどたどしい説明に、更に困惑するサガ。
仕方ないな、俺はモゾリと顔だけ上げて、この状況と経緯をサガに話してやった。
アイラが俺にプレゼントしてくれた『背中踏み踏み券』で、マッサージをしてもらってるトコロなのだと。
その間にも、アイラが踵で俺の特に凝っている部分をグリグリとしてくれるお陰で、「あ〜。」とか「う〜。」とか堪え切れねぇ声が、俺の喉奥から漏れ出ていた。


「ちっと軽いンだがな。だが、踏み方が上手いンだよ、アイラは。」
「アイラね、じょーずなの。でちちゃまのせなか、ふみふみするの、とくいなの。」
「あ〜、そこっ。そこ、イイわぁ。もっと踏んでくれ〜。」
「ふ〜みふ〜み、グ〜リグ〜リ。」
「…………。」


サガの表情が、みるみる内に困惑から羨望に変わっていくのが分かった。
そりゃそうだろうな、ずーっと山積した書類との格闘が続いてンだ。
背中マッサージは喉から手が出る程、やって欲しい筈。
無意識なンだろうが、俺とアイラをジーッと眺めて動かなくなっている。


「何、サガ? 羨ましいのか、アイラのマッサージ。」
「そ、それは……。」
「ゴメンなさい、しゃがたま。マッサージは、でちちゃまだけになの。とくべつなの。」
「そうなのか。それは残念だ。」


本気で残念そうに眉を下げ、ショボンとするサガ。
すまねぇなぁ、このマッサージは親子だからこそなンだ。
パパだけの特権なンだよ、悪ぃけど。



‐end‐





早速、踏み踏みマッサージ券を使う蟹さま。
そして、それをサガ様に見せつけて優越感に浸る蟹さま。
クッションを抱き締めてうつ伏せに寝そべる蟹さまの背中の上を、よろよろしながら踏み踏みする蟹娘ちゃんが可愛いと思ったんです。

2018.07.01



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