静かな夜の巨蟹宮。
座り慣れたソファーにドカリと沈み込み、「あぁ!」という声と共に、大きな溜息が零れる。
やっと落ち着いて休める事に、俺はホッとしていた。
なンせあの後、お祝いパーティーという名のドンチャン騒ぎに散々付き合わされて、次から次へと酒は一気飲みさせられるわ、ひやかされるわ、体力的にも精神的にもマジ疲れた、ホント疲れた。


「デス様、お疲れ様でした。」
「オマエこそ、疲れただろ? あンなバカ騒ぎに巻き込まれてよ。」
「騒ぎだなんて……。デス様、言い過ぎですって。とっても楽しかったですよ。私達の祝福のパーティーなんですから。」


疲れも見せずにコロコロと笑うアイリーン。
あンだけ振り回されたってのに、気が良いと言うか、おっとりというか。
まぁ、それがコイツの良いトコなンだが。


「久し振りだよな。二人っきりってのも。」
「そうですね。いつもはアイラがいますものね。」


俺の横に座って、アイリーンはポフッと肩に頭を預けてきた。
俺は当たり前に手を伸ばし、ギュッとその細い肩を抱き締める。
アイラのいない二人きりの夜、それが妙に新鮮だった。


「今頃、シュラ様の腕の中で寝てるんでしょうね。ふふっ。」
「そうだな……。アイツ、意外に子供の面倒見良いしな。」


俺達に気を使って、今日はアイオロスのヤツがアイラを預かってくれる事になってたンだが。
未だ置き去りの恨みが消えないのか、それとも、シュラと一緒にいたいだけなのか。
アイラは人馬宮に泊まるのを頑なに拒否し、結局は、自分の思い通りにシュラの宮に泊まる事になった。


「頑固なトコは、すっげー似てるよな。オマエに。」
「そうですか? 私、そんなに頑固ですか?」
「おーおー、頑固も頑固。メチャ頑固だぜ。そういうトコ、アイオリアにそっくりな。」
「そうかなぁ……。」


そう言うと、唇を少しすぼませて、むくれた表情をするアイリーン。
からかうと面白ぇのは、相変わらずだな。
ついつい、コイツのこういう顔を見たくなって、こうしてからかっちまうのが俺のクセ。


俺は抱き寄せていた肩を更に引き寄せ、そのふっくらした頬にキスを落とした。
突然の事に吃驚したのか、アイリーンはまん丸な目をして俺を見上げてくる。
それを確認すると、俺はニヤリと笑ってみせて、それから、額・こめかみ・鼻・顎・瞼と顔中にキスの雨を降らせた。
そして、焦らしに焦らし捲くった最後に、そのぷっくりした唇へ、ゆっくりと自分の唇を重ね合わせた。


静かな静かな夜。
時間も気にせず、俺達は深く甘いキスに、ひたすら没頭した。





- 8/10 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -