ニヤリ、先程まで不機嫌を絵に描いたような表情をしていたシュラが、今は余裕たっぷりな笑みを浮かべる。
それも憎たらしいまでに自信満々でいて、セクシーな笑みを。


「そんなに恥ずかしがる事はないだろう。もう何度、愛し合ったかしれない仲だ。」
「そ、そうは言っても……。」
「色んな愛し合い方も試したではないか。座ったまま、立ったまま、鮎香が上になった事も一度や二度ではないだろう?」
「っ?! だ、だけどっ!」


ニヤリ、右の口角に刻まれた笑みが深まる。
山羊座の黄金聖闘士が硬派でストイックだなんて、誰が言ったの?
こんなにも真っ直ぐにラテン系な人なんていない。
尽きない情熱も、果てのない愛情表現も。


「俺は鮎香に委ねるだけ、有りの儘の自分を曝け出してな。後は、お前の望むようにしろ。俺の唇も、俺の身体も、全て鮎香のものだ。」
「……っ。」


目を逸らしたいのに、逸らせない。
頬を優しく撫でる手に、魅惑の魔法でも掛かっているのじゃないかしら。
そう思える程に、彼の醸し出す雰囲気はエロティックで、逆らう事など出来そうもなかった。


「キス……、してくれないのか?」
「して……、欲しいの?」
「当然だ。鮎香からのキスがあれば、傷も直ぐに癒える。」


そんな馬鹿な事、ある訳ないのに。
口の上手さは、デスマスク様の影響かしら。
頬に添えられた手には、まるで力が入っていないのに、不思議と逆らえない。
引き寄せられるままに唇を重ねる。
身を屈めたままの、少し苦しい体勢で。


「んっ……。」
「ふっ。まだ足りん、な。」
「嘘よ。そんな事ばかり言って。」
「嘘ではない。鮎香がキスしてくれる度に、この傷が一つずつ治っていくんだ。」
「そんな馬鹿な事、絶対にないわ。」
「そう思うなら、試してみれば良い。」


そして、また少し強引なキス。
探って、絡ませて、次第に深くなっていくのは、恋人同士であれば仕方ない事。
触れるだけで、互いの心は終わりなく燃え上がっていくのだから。


気付けば、この身体ごと引き寄せられていて。
ソファーに深く座るシュラに跨り、自分もソファーに乗り上げていた。
これでは、まるで私が彼を襲っているみたい。
実際には、シュラに誘導されて、こんな体勢になってしまっただけなのに。


「やはりキスだけでは足りない。もっとして欲しい。もっとしてくれないか、鮎香。」
「もうっ! 調子に乗り過ぎよ、シュラ!」


頬から肩、肩から背へと滑り落ちたシュラの手が、背骨を辿って、更にその下へと突き進もうとするのを感じ取り、慌てて手首を掴んで、その不埒な手を引き離した。
チッと残念そうに打たれた微かな舌打ちを聞き逃さなかった私は、少し強めに彼の頬を抓る。


「完全に回復するまでは、大人しくしていてください、山羊さん。」
「嫌だと言ったら?」
「嫌だと言っても、駄目なものは駄目よ。」


頬から離した手で、今度はシュラの高い鼻を摘む。
流石に、それには閉口したのだろう、彼の口がアヒルのように尖ったのが見えて。
私は彼の鼻を摘んだまま、その尖った唇を軽く食むようにキスを落とした。



彼の心に甘噛みをして
(柔らかに独占するの)



‐end‐





結局、完治するまでお預けを食らう山羊さまの巻w
この後、「騎乗位は男のロマンだ、頼む。」と懇願するも、キッパリ断られて悶々と数日を過ごしていれば良いとか思いました(笑)
でも多分、完治した頃に、再び獅子&蠍のツープラトン攻撃を食らうと思いますw

2014.05.06



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