2.一日目@



何と言うか……、前途多難な予感。


自分が思っていたシュラ様のイメージからは遠く掛け離れた、実際の彼の姿。
そのギャップに、先程から頭の中が混乱して、状況についていけない私がいる。


そうだ。
シュラ様と言えば、『律儀』・『真面目』・『しっかり者で頼れる』、そんなイメージだったのに。
現実は、何?
「面倒だ。」が口癖の、本当の面倒臭がり。
アイオリア様のように面倒だと言いつつも行動するのとは違う、面倒な事には極力、労力を省くと言うか。
全くもって何もやる気がないと言うか。
カーテンの開け閉めが億劫だから、朝だろうと夜だろうとライトを点けるなんて、驚きの怠惰具合だ。


しかも、部屋の中がこんな状態なものだから、肝心のライトを点けるリモコンが何処にあるのか分からなくなり、アチコチ探さなきゃいけなくなる始末。
それって、人間としてどうなの?
間違ってるわよね?
明らかに間違ってるわよね?


「茶でも飲むか?」
「え……? あ、いえ……。あ、あのっ、シュラ様!」
「ん、何だ?」
「私は客ではありませんので、お気遣いは無用です。それと……、早速ですが、仕事を始めても構わないですか?」
「好きにしろ。」


お許しを得て立ち上がった私を傍目に、シュラ様は私が席を立った事で空いたソファーに座り込む。
どうやら彼は今日、お休みらしい。
その辺に積まれていた雑誌を一冊、その手に取ると、私の存在など忘れたように黙々とそれを読み出した。


その方が良い、宮付き女官とはそういうものだ。
ヘタに意識されたり、気を遣われたりすると、返って仕事がし辛い。
私達は陰から彼等の生活を支えるのが仕事。
当たり前にそこにいて、快適な居住空間を提供するために存在するのだから。


私は自分用にあてがわれた部屋へと向かった。
中に入ると、巨蟹宮から運び込まれた荷物が積まれていたが、これを解くのは後で良い。
部屋はずっと使われていなかったのだろう、何だか埃っぽくて。
でも、それはこの磨羯宮のプライベートルーム内の何処も皆、同じだった。
きっとマトモに掃除なんてしてないんだわ、ずっと。


私は窓を開けて部屋の埃を払うと、寝具を干してシーツを取り替えた。
それが終わると荷物の中からエプロンを探し出し、女官服の上から手早く身に着ける。
お掃除の際に邪魔にならないよう髪を束ねると、自然とやる気が漲り、気合が入った。


「シュラ様。このお部屋、お掃除しますね。」
「あぁ……。」


掃除用具を携え先程のリビングに戻ると、シュラ様はソファーの上に横になり、変わらず雑誌を読み耽っていた。
上半身は未だ裸のままだ。
気の利く人なら「お掃除します。」の一言で、邪魔にならないよう、この部屋から出て行ってくれるのだが、どうやらこの人には通用しないらしい。
気にせずお掃除に取り掛かるしかないだろうと、私は動く気配のないシュラ様を横目に、窓の方へと歩み寄った。





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