午後からのお仕事は、何だか楽しい気分でいっぱいだった。
ランチを終え、教皇宮に戻るまでの短い間に、リビングのソファーの上を素敵に散らかしていったシュラ様の相変わらずな片付け下手に腹を立てる事もなく、淡々とそれを片付けていく私。


一体、どうしてしまったのだろう?
昨日の私であれば、そんな状態のソファーを見たなら、確実に苛立って、ブツブツと文句の一つも呟きながら片付けていただろうに。
自分の事なのに、その心境の変化が理解出来ないでいる。


まぁ、良いわ。
考えても分からない事を深く掘り下げても仕方がない。
折角、こんなに気分良くお仕事が出来ているのだから、この調子で色々と手を回して、この殺風景な部屋を綺麗に飾ってしまおう。


そうして私は、一人でも出来る範囲で家具の配置を変えてみたり、取り替えが出来るものについては新しい物と交換したりして模様替えを進めていった。
白と黒ばかりだった単調でモノトーンだった部屋。
そこに、クッションカバーやテーブルクロスなどで加えた差し色の『青』が、キュッと引き締まったアクセントとなって、それだけでも部屋が明るくなった気がする。


欲を言えば、カーテンやラグなども取り替えたかったのだが、それは勝手に変えてしまうには、あまりに大きな変化になり過ぎるし、何より私一人で購入するには大き過ぎる買物だ。
雇い主であるシュラ様に買物に付き合って頂くのは申し訳ない気もするけれど、彼の部屋に置く物だもの。
ご自身で好きな色とか、柄とか、選んで頂いた方が、後々、何か言われずに済む。
今のクッションカバーなどは、シュラ様の選んだカーテンやラグに合わせて、また新しいものを縫えば良いわ。
今のこの状態は、とりあえずの暫定的なものだしね。


あ、そう言えば……。
巨蟹宮から移ってくる時に持ってきた荷物の中に、あまり用途のなさそうな鮮やかな色の布があったっけ。
ふと思い出し、急いで自分の部屋に戻ると、その布を探して荷物を掘り返した。
見つけた布は、ちょっと奇抜な柄だったけれど、返ってそれが良い効果をもたらすかもしれない。


私は手早く、その布を丁度良い大きさに裁ってから、端を縫って処理をした。
それを持ってリビングに戻ると、部屋の壁の東側の面に飾った。
そこは家具も何もなく真っ白で単調な壁が広がっていて、酷く寂しげな印象だった事が、凄く気になっていたのだ。
この布を壁掛けみたいに飾ったら良いかもしれない。
そんな思い付きで飾ってみたら、部屋がとても華やかになって、自分自身でも驚いた。


折角だからと思い、電話くらいしか置けない小さなサイドボードを、その前へと移動する。
そして、アフロディーテ様から頂いた白薔薇を活けた花瓶を、その上に置いてみた。


予想以上に素敵だわ。
これを見て、シュラ様は何て仰るかしら?
ちょっと手を加えただけなのに、こんなに素敵に変わった部屋を見て、吃驚して声も出ないかもしれない。
口を開けてポカンとしているシュラ様を勝手に想像し、私は一人、クスクスと笑い声を上げた。





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