「は? まだ一線を越えてねぇって? さっき、あンだけ熱烈なベロチューしておきながら、か?」
「悪いか?」
「悪いかって、オマエ。俺達が折角、あンなチャンスを作ってやったのに、手も出さなかったって事だろ? バッカじゃねぇの。」
「昨夜は疲れていたのでな。直ぐに寝てしまった。それに……。」


食事の手を止め、全ての動きも止めたシュラ様が、スッと視線だけを動かし、横目で私を流し見た。
その視線一つで、ビクリと反応してしまう私の身体。
そして、トクトクと高鳴ってしまう私の心。


「俺はアンヌの気持ちを最優先する。彼女がその気になるまで手は出さん。」
「シュラ様……。」


そうは言っても、あの時、シュラ様が寝落ちなければ危なかったのではなかろうか。
確実に酔っ払っていたし、その前の遣り取りを思うと、絶対にブレーキなんて掛けれなかったと思うけれど。


「つー事はアレか? やっとの事でカップルになれたってのに、まだ自己処理を続ける気か、黒山羊ちゃんは?」
「仕方ないだろう。それに六年も我慢したんだ。それが少し延びたところで問題ない。」
「ンなアホな事、良くやるわな。あんま我慢すンじゃねぇぞ。反動が怖ぇからな。いざ、その時になったら、アンヌの身体がぶっ壊れちまうくらいの絶倫山羊に成りかねねぇしよ。アッハハハッ!」


あの、この人の銀髪、全部、毟り取っちゃっても良いですか?
ご自慢のお洒落なお洋服、ビリビリに引き裂いてしまっても良いですか?
朝から、こんな下品な話をするなんて、デスマスク様、最低、最悪、大嫌い!


「ほらほら、デスマスク。女の子の前で、そういう話は止めるんだ。アンヌがすっかりご機嫌斜めのようだし。」
「あぁん? 放っておけ、不機嫌なヤツなんてな。」
「良いのかい、知らないよ。この宮で彼女の機嫌を損ねたら、次からマトモな待遇をしてもらえなくなる。そのコーヒーだって、アンヌが気を利かせて淹れてくれたんだろう? シュラは紅茶派だから、普段からコーヒーなんて常備してない筈なのに、キミのためだけに、わざわざ用意してあるんだよ。でも、そんな態度じゃ、次に来た時は、お茶すら出して貰えないかもね。」


それは良い考えです、アフロディーテ様。
次からデスマスク様が訪ねて来ても、お客様待遇は一切しない事にします、そうします。


「オマエ、コイツに余計な知恵をつけンじゃねぇよ。」
「兎に角、シュラ達はシュラ達のペースで進んでいけば良い。他人の事は放っておいて、キミはキミ自身の事を考えた方が良いんじゃないのかい?」
「あ? 俺は関係ねぇだろ。」
「そうかな? キミはちゃんと彼女に謝ったのかい? どうせキミの事だ。彼女を怒らせて、それで出て行かれたんだろう? ちゃんと『戻って来てください。』って、頭を下げに行くべきだよ、デスマスク。」
「煩ぇよ、このカマ聖闘士。」


再び自分の話題に戻されて、途端にデスマスク様が不貞腐れる。
一方、オカマ呼ばわりされても、一向に優雅な笑みを絶やさない余裕のアフロディーテ様は、この場で一番の大人だと思う。


私はチラリと横のシュラ様を見上げた。
フッと小さな笑みを浮かべて、「気にするな。」と瞳で語り掛けてくる。
その時はじめて、シュラ様とこうして目と目で遣り取り出来る関係になったんだと、そう実感して、ジワリと心の奥で嬉しさが滲んだ。



→第3章 第1話に続く





だらだらと続いた第2章も、やっと終わりました。
そして、遂に(泥酔した勢いで)告白に成功した山羊さまと、鈍い事では聖域一の夢主さんがくっ付くことに!
しかし、紳士な(?)な山羊さまのお陰で、まだまだ本当の恋人関係になるまでの道程は遠い模様です(苦笑)

第3章は、任務から戻って来たアイオリアにより、一波乱起きる予定。
そして、日本人のサブ夢主さんが登場します。
では、続きをお楽しみください^▽^



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