7.飲み会準備@



翌朝。
キッチンの作業台の上に様々な食材を並べた私は、その前でウンウンと頭を悩ませていた。
悩みの原因は、今夜予定されている飲み会のお料理。
シュラ様がパエリアを作ってくれるとは言っていたが、まさか一品だけという訳にもいかない。
お酒を飲みながら摘めるようなお料理を、他にも幾つか並べないといけないだろう。
何より、舌の肥えたデスマスク様がいらっしゃるとあっては、下手なものは出せない。
という訳で、昨日の夕方に買い込んだ食材を前に、朝から頭をフル回転させていた。


――パタンッ。


そうこうしている内に、リビングの方から扉の閉まる音が聞こえてきてハッとする。
あれは、シュラ様が早朝トレーニングから帰って来た音。
もう、そんな時間になってたんだわ、もたもたしてはいられない。
私はいつもの条件反射で、いつもの三点セットの濡れ布巾・トング・籠を手にすると、いつものようにダイニングのドアの内側で、いつもと同じシュラ様の足音が遠ざかるのを待った。


――バサッ、ボタッ。


ドアの向こう側からは、汗に濡れた服を脱ぎ捨てる音が聞こえてくる。
そして、徐々に小さくなる足音。
普段なら、この辺りで最後の一枚を脱ぎ捨て、浴室へと繋がるドアが閉まる音が聞こえてくるのだが。


……あれ?


ドアを開ける音も、閉まる音も聞こえなかったけど、まさか聞き逃したという事はないわよね。
どうしたのだろう?
でも、今、出て行けば、確実に色々と危険な姿のシュラ様を目の当たりにしてしまう。
それは避けたい。
それだけは避けたい。


そう思って、数分、耳を凝らして待ってみたが、一向にドアの開閉音は聞こえてこなかった。
やはり、私が音を聞き逃しただけなのかもしれない。
きっと、シュラ様はもうシャワーを浴びているのだろう。
そう判断して、ダイニングのドアを開き、リビングへと出て行った私。
しかし、そこには予想に反して、まだ浴室へと向かっていなかったシュラ様が、こちらに背を向けて立ち尽くしていた。
汗に濡れた下着一枚だけの姿で!


「し、シュラ様っ?! そ、そのような格好で、何をなさっているのですっ?!」


慌てて背を向ける三点セットを抱えたままの私と、同時にコチラを振り返ったシュラ様。
あ、危なかった!
間一髪、またも色々と刺激的過ぎるシュラ様の姿を、直に見てしまうところだったわ!


「アンヌ。」
「は、はい?」
「今日、デスマスク達は、何時頃に来ると言っていた?」
「何時とは聞いていませんが、夕方頃にはいらっしゃるのではないでしょうか。執務が終わるくらいの時間かと……。」
「そう、か。」


まさか、たったそれだけの事を考えて、ずっと半裸な格好で立ち尽くしていたのでしょうか、この人は?
謎です。
相変わらずシュラ様の行動は、謎がいっぱいです。





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