「いいんだな?出さないんだな?」
「な、なによ。んー、まあここは…パス」
「きたぞ俺の天下!」
「あっ、あああああ!」

こうして一瞬の判断ミスにより黄金の時代を手放した私。
え、なんの黄金時代かって?それは…

「俺が大富豪だ!(くわっ)」

なにを隠そう、今は毎年恒例、みんなで大富豪をやっています。
どんどんイタチの手札が減っていくのを見て、さっき無理にでも親をとっていればと後悔する。

「うわー出しとけばよかった、最悪ー」
「フフフ、8切りの恐ろしさおもいしったか!」
「だけど私今回引きがよかったんだよね、そりゃっAのペア!」
「うおお、まだそんなの持っていたのか、おじさんパス」
「俺もパスー」
「もうちょっと大富豪になった余韻にひたらせてくれてもいいんじゃないか」
「あーはいはいすごーい」
「愛が感じられないぞ」
「気のせいだって。ほい、5の三枚出し!」
「甘いなレイ、おじさんは7の三枚出しだ!」
「うわあああ、まだ三枚組を持ってるなんて…!」
「俺も10の三枚出し!」
「なんだと…!?おじさん勝負に出たのに…!」
「あ、ジョーカーはサスケが持ってたのね、って、私出すのないや。パース」
「おじさんもパス…だからサスケからだな」
「よっしゃ、じゃあ俺これで上がり!」
「なにっ!?」
「兄さん、俺勝ったよ!」
「よくやったな、サスケ」

サスケがスペードの3、4、5の三枚を出して上がった。マイ手札を確認する。Kが二枚、A、2の四枚。わあなんていいタイミング!

「よし、勝ったー!K、A、2ー」
「うわ、出すのないぞ」
「からのー、K。で、上がり!」

最後にKを静かに置いて、私も上がりだ。ってことは、

「イタチが大富豪、私とサスケが平民、おじさんがド貧民だね」

その言葉を聞いて、イタチを中心にみんなもそもそと動き始める。時計回りに、勝った人順となるように。

「平民はカード渡したりしなくてもいいんだよね、レイちゃん」
「そうだよサスケ」
「ド貧民…なんか響きが…」
「というわけで俺にいい札一枚くださいねおじさん」

イタチがシャシャシャッとカードを配りながらいい笑顔で言った。
その綺麗な指を見ながら私は考える。イタチを大富豪の座から引きずり落としてやろう。そう、都落ちだ!
都落ちとは――大富豪がトップで上がれなかった場合、次のゲームでド貧民になってしまうというルール。

「ほらレイ、大富豪の俺が選んでやったぞ」
「いちいち主張するのね、そこは」

イタチから受け取ったカードを見る。お、ジョーカーきた!
それに結構強いカードもあるし…いけるかもしれない!あのイタチに勝てる日が!

「じゃあはじめるぞ…6」
「7−」
「んー、じゃあ8で切ってー、3」
「6だ」

「じゃあ俺も8で切って…7二枚」
「じゃあ俺Q二枚!」」
「え、上がりすぎじゃん!…私パース」
「おじさんもパスだ」

「じゃあ俺はAの二枚だ」
「んー、俺パス!」
「じゃあ私2二枚。で4二枚」
「…よし、J2枚だ」

「上がりすぎですよおじさん。パス」
「K二まーい」
「じゃあ私Aとジョーカーで」
「う…パス」


―――ゲームは進んでいって、もう手札も数枚になった。
ゲームをしている中で気づいたことは、まずイタチはポーカーフェイスが上手い。特にパスをする時の。あえてパスをするのか、それとも出せるカードがないからパスをするのかの見分けが全然つかない。しかしまあ親をとった時のどや顔はむかつく。
次にサスケ。サスケは出せるカードがないときに、困ったような顔になる。かわいいのである。
おじさんは、どうやら今回はいいカードがまわってこなかったようで、ずっと苦笑いをしている。心なしか大人の色気とやらが漂っている。


「フッ、また大富豪になってしまったな」
「都落ち狙ってたのに…あのときあれを出してれば…!」

今回、イタチが大富豪、次にサスケ、おじさん、ド貧民が私…となってしまった。

「すまないなレイ」
「うう、あそこで一番強いの出してたら…」
「レイちゃん、俺が応援してるよ!」
「ありがとうサスケ…!」
「おじさんも応援してるぞ」
「あ、ありがとう、おじさん。でもおじさんに負かされたんだけど」
「そこは気にするな」
「…うん」
「ド貧民、カードを配れ」
「はいはい」

イタチがすごくいい笑顔だ。どさくさにまぎれてカードを投げつけてやろうかこのやろう。

「レイ、一番いいカードを俺に渡すんだ」
「わかってるってば!…うわ、こんな時に限ってジョーカーあるし…」
「俺は3をくれてやろう」
「言うな!」



結局――、

「すまないみんな…俺が強すぎて」

イタチがほとんど大富豪だった。

「兄さんすげー!」
「なんかずるしてるんじゃないの?」
「カードを配っているのは俺じゃないぞ」
「すまないレイ…おじさんが悪いんだ…」
「そんなことないよおじさん、悪いのは全部イタチだよ」

あえて言うなら、15回ほどして、おじさんが8回ほどド貧民になった。
あ、おじさんちょっと涙目になってる。

「悪いとはなんだ悪いとは」
「イタチってばカードの出し方がうまいんだよ」
「それは褒めてるのか?貶してるのか?」
「とりあえず褒めてる」
「だいたいレイは勝負に出るところが違うんだくどくどくどくど」
「さーてサスケ、次は花札しよっか」
「うん!」
「おい無視するな」
「花札か…それなら俺も天下を取れそうだ」
「おじさん天下は譲りませんよついでにレイも」
「フッ、それは俺に勝ってから言うんだな!」
「とりあえず去年の覇者240点中200点とった私だったからね、そこのところ踏まえてよろしく!」



みんなで今日も楽しく遊んでます。