さよならの夢(がくルカ)





───あなたは卑怯すぎます。




───これだけ人を惹き付けておきながら、あなたは・・・。



















 目を醒ますと、そこは辺り一面紫色の花畑だった。


「っ?ここは・・・?」
 前後左右を見渡してみても、何処までも紫の大地が続いているだけで他には何もない。ついでに、こんな場所で眠った記憶もない。
 はっきり言って、理解不能である。


「これは、一体・・・?」
「おはよう、ルカ」
「あ、おはよ・・・っ!?」


 突然聞こえた自分以外の声に思わずビクッとした。が、直ぐに聞き慣れた声だと気付いた。


「がくぽ!」
「ごめん、びっくりした?」


 そう、居たのはがくぽだった。
 いつから其処に居たのだろう、今しがた辺りを見渡した時にはその間抜け面は何処にも無かったはずなのに。


「あの、ここは?」
「ルカ、ごめんね」
「えっ・・・?」








「ずっと、一緒に居られなくて」








 寂しく笑って彼が言う。と言うか、会話が噛み合っていないのだが。
「がくぽ、何を言っているのですか?」
「・・・。」

 私がそう尋ねても、がくぽは何も言わない。そんな彼に、何か胸に引っ掛かるような感覚を覚える。
(何だろう、何か忘れている・・・?)


「あの、がく・・・っ!?」

















 突然、彼に唇を奪われた。淫らなものじゃない、触れるだけのキス。


















「──っな、何を!?」
「・・・ルカ」















「幸せに、なってくれよ・・・」













 彼の一言を最後に、急に世界が暗転した。




















 そこで、まるで引き戻されるように私の意識は覚醒した。
「えっ?」
 跳ね起きて辺りを確認する。自分の部屋ではない、彼の部屋だった。彼のベッドで眠ってしまったらしい。




「あっ・・・」




 寝惚けていた頭が、不意に忘れていた現実を掴んだ。それは、出来れば嘘であってほしい現実。
(・・・そうですよ、彼は・・・)















───死んだじゃないか・・・私を置いて。








 それを思い出した瞬間だった。今見ていたものと忘れていたもの、夢と現実が私の中で噛み合った。
「・・・あぁ、そっか・・・」


















───彼は、会いにきてくれたのだ。






───いつまでも自分を想って泣く恋人に「もういいよ」と、言いに来てくれたのだ。


















 思えば、彼の唇はひどく冷たかった。


「・・・バカ、ですね」
 届く筈はないのに、そう呟かずにはいられなくて、


「・・・『幸せに』なんて・・・!」
 部屋に漂う彼の残り香が、あまりに切なくて、








「あなた、以外との・・・幸せ、なんて・・・!」








───今の私には、とても考えられないのに。














 失った幸せを想い落ちる涙は、白いシーツにポツリポツリと消えていった。



















───もう会えない貴方のことが、






───壊れるくらい、いとおしい・・・。






end




○あとがき○
 小話のつもりで書いてたら長くなったので小説に変更、といウ・・・。悲恋ものは難しいですネ。


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