※軽い自傷行為、性的表現があります!苦手な方はUターンしてください。
※ぬるいけどいろいろあるから18禁です。
※少しだけVW風味もありますのでご注意下さい。













パン!

Wの部屋から何かが割れた音が響く。一回だけではない、何度も何度も破壊音が聞こえてくる。
通りがかったXは、諦めたように肩を竦める。
久しぶりの癇癪でWの部屋の硝子製品や、脆い物はだいたいこれで使い物にならなくなるだろう。Wの部屋に窓がないのがこのホテル不幸中の幸いだ。そうでなければ窓ガラスは全て吹き飛ぶか、破壊されている。

いつもこの次男の癇癪は末っ子のVが宥めていた。
しかし、そのVが目覚める事はない。
その上、トロンに…愛する父親に失望されたのだ。
さすがのXもWを慰めてやりたくなる。

一通り破壊音が収まって、しばらくしてからXは、弟の部屋に気配を消して入った。

「…W?」

まず目に飛び込んできたのは予想通り、破壊尽くされた無惨な部屋。割れた硝子、引き裂かれたシーツや枕、カーテン、飾られてたであろう絵画も花瓶なども壊れて床に散らばっている。
その殺伐とした部屋の真ん中に、Wは立っていた。
弟の纏う異様な雰囲気に、近づくのを躊躇っていると、Xの存在に未だに気付かないWがゆっくり動いた。
左腕の袖を捲り上げて、床から何かを拾う。よく見るとその手には、鋭く尖った大きな硝子の破片。
その破片をWは左の手首にあてがった。

まさか…。

嫌な予感がしたXは、彼にしては珍しく考えるより先に体が動く。
音でXに気付いたWが驚いて動けないうちに、硝子を持つWの手を掴み上げる。

「何だよ、X!離せ!」
「…お前こそ、一体何をするつもりだった?その破片は捨てろ。」

睨み付けると、Wは渋々硝子を床に捨てた。高い音を立てて、その破片は更にいくつかの欠片になる。

「出てけよ…。今更何しに来たんだX!トロンに失望されたオレを、嘲笑いに来たのか!?」
「違う。」
「なら、さっさと出てけ!」

Xに顔を見せないように俯いたWは、苛々したように足元に散乱した…多分花瓶に生けられていたであろうカサブランカの花を踏みつける。
Xは視線を袖が捲られた左手首に移して、破片で怪我はしていないか確かめた。怪我は無さそうだが、その腕に薄く見えた影にXはWの左腕を掴み上げる。

「やめろっ!」

すぐにWが暴れて、Xから逃げてしまったので一瞬だったが、はっきり見えた。
左腕を右手で隠しながら、Wはベッドまで後退る。
しかし、Xは驚きで固まったままだった。

「…W…お前…」

普段、服で隠れているWの左腕の内側には薄い傷痕があった。
いくつもある横ライン状の傷痕、先程の不可解な行動。答えは1つだった。

リストカット…位置的にはアームカットの方が正しいかもしれない。

自傷行為だ。
自分の弟にはまるで似合わない。これは予想できなかった事で、Xは激しく動揺した。

「なんだよ…オレの身体だ、どうしようがオレの自由だろっ!」
「馬鹿な事を…っ」

感情的な弟だとは分かっていたが、周りを傷つけるだけではなく自分自身まで傷つけているとは思えなかった。気付いてやれずにいた罪悪感がXの胸を締め付ける。
Xが近付くと、Wは叱られるとでも思ったのだろう、左腕を庇うようにベッド脇に屈みながらも懸命に兄を睨み付ける。Xにしてみれば手負いの獣に向かって行くような感覚だ。

「いつから、こんな馬鹿な事をしている?」

Wの隣にまで行くと、引き裂かれたシーツのベッドに腰掛ける。
一瞬見ただけだが、傷痕はいくつもあった。一回二回などではないだろう。

「…デリカシーのない兄貴には答えねぇよ。」
「W…真面目に聞け。」
「触んな!」

やはり顔を合わせようとしない弟に、痺れをきらして肩を掴むと、その手を振り払われる。

「あ…」

その瞬間、目が合うとWは酷く歪んだ顔をした。まるで泣きそうな、脅えたような、負の感情が混じった表情でXを見上げた。
しかしすぐに、その表情は消えて、普段の生意気な顔に戻る。

「……ハハハッ!今までずっと知らなかった癖に…今更、兄貴面かよ?あァ?ふざけんじゃねえ!うぜーんだよ!トロンのお気に入りの癖にオレに話しかけるなよ!!」

嫌悪感を露にしてWはベッドのシーツの裂け目に指を入れて、引く。Wの苛立ちの矛先になったシーツはさらに大きく破けて、無惨な姿へと変わる。

「…………お気に入りは神代凌牙だ。わたしはトロンにとってただの忠実な駒だろう。」
「厄介者のオレに比べりゃ十分お気に入りだ!わかってる…オレは…もうすぐ必要とすらされなくなる!」

確かに、トロンの関心はすでに凌牙に向いている。始めから凌牙を狙っていたとはいえ、今の凌牙の強さを家族以上に信頼していると言ってもいい。
それは、Wにとって…家族にとって身が裂かれるほど苦痛なことだ。

「トロンに必要とされないなら、オレは何なんだ!いらないなら、いっそオレなんかVの代わりにしちまえばよかったろ!アイツのがトロンの言うことちゃんと聞いて、オレより上手くやるさ!」
「W!!」

珍しく声を荒げたXにWは怯む。しかし、睨んだままの瞳はXから逃げることはなかった。

「いらない家族など居ない…!お前も、Vも、わたしにとっては替えることなどできない大切な弟だ。」

Vを失いたくなどなかった。同じようにWもこれから失いたくなどない。もちろん、父親も。

「頼む…お前まで、わたしから居なくなるな…W。」

睨んでいたWの瞳が、警戒心を解くように伏せられた。
いつの間にか袖を戻して腕を隠したWは立ち上がると、Xの前に行く。

「オレからも頼みがある。」
「なんだ?」

幼い頃から素直じゃない弟からの頼みとは珍しい。
Xとしっかり目を合わせていると言うことは、本当にお願いしたい事なのだろう。少しでも後ろめたいことがあると、Wは視線を反らすのだ。
視線を反らすことなくWは口を開く。

「オレを抱け。」

だからこそXは聞き間違えだと思った。

抱け…?
あれだろうか、抱っこだろうか?赤ちゃん返りでもしてしまったのか?そんなに精神的に追い詰められいたのか?

混乱しているうちに、Xは天井を見ており、Wが馬乗りになっていた。

「待て。W…何故そうなるか…説明をしてから…」
「てめえが手首切るの止めたからだよクソ兄貴。」

説明になっていない。
止める間もなく、WはXの上着に手をかけてくる。慌てて抵抗しようとすると、膝で股間を刺激される。

「やめなさい、W。」
「……なんだよ。お前も、オレは必要ねえのかよ?」
「そう言う事ではない…!」

揉み合いながらも確実に服をWにはだけさせられてゆく。シャツのボタンを全て外され、露になったXの胸に弟は頬を寄せた。

「なあ兄貴…必要としてくれよ。オレ、もう言葉だけじゃ足りねーんだ。」

Xの長い髪を一房、Wは手に絡めるとそのまま口づける。
しかし淫靡な雰囲気は無く、Xから見ると幼い子どもが甘えたような様子にしか映らない。

「わたしは、お前の言葉が欲しい。理由もなくそんな事…」

Wは小さく舌打ちをする。互いに頑固ではあるが、弟は気が短い。このまま怒って話が流れてしまえばとXは願う。

「……………腕を切ると、気持ちが落ち着いた。」
「W…お前……」

だが、Wは怒ることなく説明をする事を選択した。
上半身を起こしたWは上着を脱ぎ捨て、シャツも床に落とすと、褐色に近い素肌を晒す。もちろん、隠していた左腕のアームカットの痕も見えた。

「やめられねぇし、死なないし…前までは癖みたいになってたんだぜ?でも、この傷痕もう消えかけてるだろ。」

改めて見た刃傷は、確かに薄くなっているものばかりだ。どれくらいで消えるものなのかは定かではないが、ある程度昔のものだろう。

「オレの癖が、Vにバレた。」

癇癪を起こすたびに、腕を切っていたとしたら、宥め役のVに見つかってもおかしくない。
しかしそれと今の状況の関係には繋がらないような気がする。

「それから、Vに抱いて貰ったら…腕を切らなくても大丈夫になった。」

Xの思考が、停止する。復旧までに時間が少しかかった。

「…………………………………ちょっと…待て、さらりと、何だと…」
「Vとセックスしたら、大丈夫になった。」

説明はした、とでも言うようにWはXのベルトを外し始める。ショックでしばらく思考を停止させといたXが気付いた時にはWはXの萎えている自身を慣れたようにズボンのチャックの間から取り出していた。

「W!」
「説明したぜ。オレはセックスしねぇと腕切りたくなるってことだ。わかっただろ?気持ちよくしてやっから、そんなに怒るなよ。」
「そう言う問題ではな…っつ!」

Wは口を開くと、Xの自身を舌で弄り始める。大きさがあるため手も使い、巧みに快感を与えてくる。

「なんだよ兄貴、慌てすぎだろ。もしかして童貞?…にしても、こんなでっけーチンコ見たの初めてかも。」
「…どっ……!下世話な話はやめろっ」
「こんなチンコ、ビンビンにしてる奴に言われてもなア…んー」

先走りが溢れる自身をWは目を細めると、口で銜えた。
自身を柔らかい口腔の粘膜に包まれて、2つの玉を揉まれればXは荒い吐息を繰り返すことしか出来ない。

「素直になれよ兄貴。オレが欲しいんだろう?」

Xは声を押し殺すので精一杯になり、返答できずにいた。頭の中は、普段ある程度の事では動揺しない分、動揺を抑える方法がわからない。

WとVが性的に関係を持つことはまだ受け入れられた。
自分達家族は、他の家族より愛情の形がイビツだ。途中でバラバラに離れた事や、復讐を考えればおかしくなるのも無理はない。
特にWとVは家族がバラバラになった時は幼かった。家族への依存も人一倍強い。

しかしWが女役だと言うことは未だにXの中では信じられない。どちらかといえば中性的な容姿のVに女性の影や母性を求めているのならば理解できた。プライドも高いWが組み敷かれるのを選ぶ意味がXには解らない。

更にXにまで身体を差し出すWへの驚き、自分自身がWを求めている自覚が、彼の本来もつ冷静さを失わせた。

「んだよ…早くイけよ…!この遅漏っ」
「……っく、W…お前は…」

Xは理性を総動員させて、上半身をどうにか起き上がらせる。
懸命にXの自身に奉仕するWの顔を上げさせると、不満げに弟は睨んできた。

「なんだよ、イイとこで。やめねーぞ。」

唇を唾液で濡らしながら、Wは拭うことなくXに文句を言う。手はXの気を変えさせないとでも言うようにより激しくX自身を掻く。

「……流石にこの状態じゃ、やめられん…っそれより、1つ聞きたい。」
「なんだよっ」

イライラしたようにWはXに怒鳴る。

「お前は、わたしに抱かれたいと言うこと…わたしが好きなのか?」
「……嫌いなワケないだろ!オレだって、兄弟は…家族は大切だ!オレは誰に抱かれてもいいビッチじゃねえ。家族だから、兄貴やVだから欲しいんだよ!」
「そうか…」

Xは、考える事をやめた。
頬を赤く染めたWの金髪をそっとかき上げると、そのまま腰に腕を回して抱き締める。びくり、と一瞬体を震わせたWは大人しくその腕の中におさまった。

「兄貴…必要だって…オレを欲しがってくれよ…!」

すがるようなWの両手が、Xのシャツの裾を掴む。赤紫の瞳は迷子のように不安げに揺れている。

「欲しいに、決まっているだろう…?」

力を込めて、更に強く抱き締めると、一変してWは幸せそうに笑みを浮かべる。
やはり色香はなく、幼子が安堵するようなWの表情に、Xの罪悪感が痛いほど胸を締め付けた。

きっと、後悔する。

分かっていながら、XはWを抱き締めたまま、もう一度ベッドへ体を沈めた。










「うあっ…兄貴っ…!っはぁ、あに…きぃ…!」

苦しそうに顔を歪めながら、WはXの上で腰を振る。横になったままのXは激しく突き上げたい衝動を抑えながら、Wの体を支えるように腰に手を添えた。

「…キツいのなら、もっとゆっくり動いたらどうだ…」

Wの声は明らかに快楽よりも、痛みを耐えるように聞こえる。性急に行為を進めたWがろくに後孔を慣らさなかったのだ。苦痛に耐えながらWは腰を上下に揺らすが、Xの自身は全て入ってはいない。

「キツく…ねぇよっ…X、てめえこそ、動けよ…!」
「こんなに、締め付けられて…動けるわけ…っ」

Wは汗ばんだ手で、腰を支えるXの腕を掴む。眉間にシワを寄せながらも、Wは口角を上げて笑う。

「簡単だろ…この腕に、力を込めてオレの腰を引き寄せればいい。」

今でも苦痛に悶える弟に、さらに苦痛を与えろと言っているようなものだ。

「…お前に、そんな事、できるか…!」

Xは露出したWの自身を手の平で包む。痛みに萎えずに勃つまだ大人になりきらないWのものを擦るとWは悲鳴の様な声を上げる。

「ばっ…ああっ駄目だ…!犯せよ!そんな、気持ち…っよく、なくていいんだ!酷くしろよ!…やっああぁあっ」

構わずに人差し指でW自身の先端を抉るように擦り、二つの玉を揉んでやる。快感に四肢の力の抜け、Wの中の締め付けが一瞬弛む。その瞬間に、XはWへ腰を突き上げて、全てをおさめるように奥まで進めた。

「あっ…は、入った…兄貴の…」

愛しそうに隙間のない結合部を撫でると、WはXの下腹部に手を当てた。

「平気だから、動けよ。」
「W…」
「酷くしろ…!」

Xは、繋がったままWを抱き寄せると、そのまま押し倒す。組み敷かれたWは嬉しそうに期待で瞳を輝かせた。

「……無理だ。」

Xの拒絶の言葉に、Wは先程とはうって代わり兄に絶望的な表情を向ける。そんなWにXは困ったように微笑みかけた。
演じることが上手くなった弟も、自分の前では昔から変わらずに表情だけは素直だ。

「…わたしは、お前を愛してやることしか、できない。」

惚けたようにXを見上げたまま微動だにしないWに、唇を重ねてやる。
触れるだけのつもりだった。だがWの舌が口腔に滑り込み、Xの舌に絡まる。そうなると互いに相手を求めるようにキスは深く長くなる。呼吸がままならないほど夢中に口づければ、理性もその熱で焼き切れてしまう。

「兄貴…もっと、」

離れた唇から、鼻にかかったような甘い弟のおねだりに再びキスを落とす。一通り口腔を蹂躙すると、Xはゆっくり律動を始める。今度は苦痛に喘ぐ声とは違う、嬌声がXの耳を犯す。

大きく突き上げる度にWの脚が宙を蹴り、シーツに手指を食い込ませる。

「あっ…ああ、にき…!おかし…なりそっ…」
「W…大丈夫か?」

コクコクと頷きながらも、涙を滲ませるWにXは心配になってしまう。とはいえ、身体は心配する心とは裏腹に動き続ける。
強くシーツ食い込んだ手を、首に回させた。WはすぐにXにしがみつく。不安定に宙に浮いていた脚もXの腰に絡み付いた。

Wの身体を貪りながらも、頭の片隅には、大会のパーティーの存在がXを戒める。トロンの計画に支障がでないか、と冷静に考えている所もあるのだが、ほとんどは淫行によって機能していない。

「…んあっ…オレを…て、あにきぃ…!」
「どうした?」

Wが揺さぶられながら頻りに何かを求めてくる。よく聞こえない為、手加減しながらWと顔を合わせるようにして問いかけた。

後悔することになると知らずに。

Wは快感のあまり蕩けたような表情をしていた。いつもは鋭くつり上がった瞳も、とろんと微睡みを帯びたように柔らかい。しかし、どこか幼げである。身体を重ねて互いに性欲に溺れても、Wは行為をする前と変わらず、纏う空気は淫猥なものよりも、どことなく子どもが甘える其れなのだ。

「おれ…見てっ…あっ……オレを見てっ…オレだけ…見て!父さんばっか、見てないで……っ今はオレを見てくれよ!」

Wのガーネットのような瞳に滲んだ涙が、一粒落ちた。行為による生理的な涙ではないだろう。乞うように見上げられれば、Xの庇護欲が掻き立てられる。

「どんな事、してもいい!なんでも…するから!今だけでいい!オレを見て!欲しがって!オレが必要だって…ここに居ていいんだって…!オレを見て…!オレを、みて…?オレだけを…」

突然Xの胸が締め付けられるように痛む。
気付いてしまった。
Wの心は、家族が離ればなれになったあの日から、ほとんど変わっていない。
訳もわからず父を失い、兄と別れ、残された自分より小さな弟を守らなくてはならなかった幼いW。感情的なWはどれ程の事を耐えて、我慢して、父兄を待ち続けたのだろう。
その時から、Wの心は孤独な子どものままなのだ。
ようやく帰ってきた父も身も心も変わり果て、迎えにきた兄は父と復讐に燃えていた。
耐え続けた想いのやり場はどこにもなかったろう。
弟は、決して置き去りにしたXを責めることはなかった。Wは特に再会の時にはだいぶ大きくなっていたのもあり、寂しさも何もVと違って訴えずにいた。復讐ばかり気に掛けていて、自分は弟の気持ちをちゃんと見てやれていなかったのかもしれない。
性格ゆえに反抗することもあったが、汚い仕事もVやXに任せずにWはこなした。それでもXやトロンにぶつかっていたのは性格だけでなく、わかりにくいWの訴えだったのかもしれない。

自分を見て欲しい。
必要として欲しい。
信じて欲しい。
また、捨てないで。
寂しい、悲しい、辛い、苦しい、気付いて気付いて気付いて…。

身体を繋げて、向き合って、ようやく知ったWの心の声。
Xは堪らずWを掻き抱くように後頭部と背中に腕を回して力を込める。

「見てるだろう…?さっきも言ったが、お前は大切な家族だ。」
「たりねぇよ!」

不満げに腰を揺らすWに誘われて、Xも行為を再開する。

「あっ…もっと、もっとだ…こんなんじゃ、足りねえっ…ああっ」
「W…!どうすれば、いいんだ?」

ぐるりと回すように突くとWは言葉にならないらしく、Xの肩に額を寄せて震えた。
その姿に気を良くしたXは、Wの中を広げるような動きに変えたり、また奥へ貫いたりと、弟が喘ぐことしかできない位に激しく求めてやる。
WがXを奥で感じるたびにビクンと震わせる手を伸ばして、兄の長い青髪を掴む。

「…あに…きっ」

そのまま強く引っ張られた。
引き寄せられたまま倒れ込むと、今度はWから口づけられる。

「もっと、愛して…!」

恋しがる弟の言われるままに、激しく腰を突き上げた。涙が溢れる目尻を拭うよう舌で舐めて、顔に深く残る一生消えないであろう傷痕を唇で何度も愛撫する。Wの指に絡んだままの髪が痛むが、それ以上にWを愛してやりたかった。
額から胸までいくつもの口づけを落とす。繋げた身体は求めるように一層激しくぶつかり合う。離さないとばかりに締め付けが強くなり、Xの限界が近づく。

「あに…!あっもっ…イク…ッんあ、ああっあっあ、ああ…!」
「くっ…―――…!」

霞んだ意識の中で、数年ぶりにWの捨てた名を呼んだ。















絶頂を迎えるとWは意識を失うように眠った。
3日間の予選で疲れていたのだろう。
Xは慣れない後始末をどうにか終えると、ベットに寝かせておいたWの隣に横になる。
自分の部屋に戻ろうかとも考えたが、Vを失って不安定なWを見たからには一人にする事は出来なかった。
子どもの頃と変わらない無防備なWの寝顔に、自然と笑みが零れる。

「…すまない、W。」

きっと、わたしはまたお前を1人にしてしまう。先にVの元に、行ってしまうのは自分だ。
そしたらWはまた自分を傷付けてしまうのだろうか。

Xは薄い傷痕の残る腕を優しく撫でてやる。

(Wは…性行為をすれば、腕を切らなくてすむと言ったが…。)

Wは勘違いをしている。

セックスで腕を切る癖を抑えているのではない。セックスをする事によって自分を傷つけている。

セックスという名の自傷行為だ。

腕を切る、と言うように外見的に傷はない為、Wは気づいてないだけである。
兄弟と身体を重ねる背徳感や、女役をさせられる羞恥心が、孤独を紛らわせる。
それに、セックスは愛情を求めるWにはちょうど良かった。

Vや自分に犯され、心身を傷つける。一方でVや自分に愛され、求められ、心身を満たされる。
1人きりで腕を切る時よりも、よっぽど心が救われただろう。

「本当に、バカな奴だ…。」

絶頂を迎える前、Xの髪を手に絡ませて愛を求める様はまるで、壊れた操り人形だった。
愛を必要とする哀れな人形。

「Vにも、わたしにも、これほど愛されているというのに。」

本当に愛されたいひとに、今は愛されていないと、感じているのだ。それを認めたくなくてがむしゃらに愛を求める。

情事が終わり、冷静になったXにはその相手がわかった。

本当に自分を見て欲しいひとは、
本当に必要として欲しいひとは、
本当に信じて欲しいひとは、
本当に捨てないで欲しいひとは、
Wにとってただ1人。

父親だ。


哀れな哀れなお人形は譚詩曲と共に、壊れるまで踊り続ける。
ただ、愛されることを願いながら。



END























XW!
X兄様がなに考えてるのかわかりません…←
ブラコン気味になってしまった…もっと、笑止!(ドヤァ)なX兄様やWくん大暴れさせたかった…。
表現も精進します…。

書かなくても良いかもしれませんが…自傷行為については雪菜の勝手な解釈であり、色々参考にもさせていただきましたが、あくまで創作ですので深く考えないで下さい。
まあ、雪菜の小説で考えることも無いと思いますが(笑)


最後に、ここまで丁寧に読んで下さりありがとうございます!







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