20**/ 1/24 18:30
from 海馬
subject 無題
――――――――――――――
仕事が入って、明日会えなくなった。








すまん。
―――END―――


城之内はメールを見て、思わず笑ってしまった。
あの海馬が謝ることも稀だが、メール本文の一番下に一言というのが妙に可笑しい。

(素直じゃねーの。)

そうおもいながら返信を手早く打つ。ケータイにも慣れたものだ。
フリーターがファーストフード店でメールを返している相手が大企業の社長だとは誰も想像しないだろう。
城之内は打ち終えたメールを確認する。誤字脱字があろうものなら、正論と馬鹿にするような説教じみたイヤミメールが返ってくるのは経験済みだ。

大概素直じゃないな、オレも。

城之内は苦笑しながら送信ボタンを押した。


20**/ 1/24 18:44
from 凡骨
subject Re:
――――――――――――――
ばーか











無理すんなよ。

―――END―――



海馬は予想以上の返信の早さに驚いた。
パソコンを片手で打ちながらケータイを開くと、思わず笑みが零れる。

「貴様のが、馬鹿だろう・・。」

強がりが。
アイツはいつも他人を困らせるようなワガママを言わない。家庭環境がどうのなどよく知らんが、ソコが馬鹿なのだ。

海馬はメールを打ち始めるが途中で電源ボタンを連打し、メールを打つのをやめる。

まどろこしい。

そう思った海馬はすぐさま電話に切り替えた。



城之内は帰路につきながら、夜空を見上げた。街灯のある童実野町では星はほとんど見えない。

雪はないが、まだまだ寒い。
城之内は白い息を吐きながらコートのポケットに手を入れる。
ポケットに手を入れて暖めていると、ポケットの中にあるケータイのバイブが鳴る。

海馬だ、と思いケータイを開くとメールではなく予想外の電話であった。

「・・ちょ、マジかよアイツ・・・」

電話なんて、声を聞くなんて何週間ぶりだろう。

とにかく切れる前にと慌てて通話ボタンを押す。


「は・・・」

『遅いぞ凡骨。』

聞きなれた・・でも最近聞くことのなかった心地よい低音が城之内の耳に滑り込んでくる。

「うるせーよ。お前がいきなりかけてくっから・・。」

『フン。驚いたか?』

「・・っちげーよ!そもそもコレ電話だろ?電話代いくらかかると思ってるんだよ!オレやっすい定額のしか入ってねーから長くは話せないからな!」

照れ隠しにワケの分からない事を口走ると、電話口で海馬がふ、と笑ったような気がした。

そして落とされる、爆弾。

『仕方ないだろう?貴様の声が聞きたかったのだから。』

妙に艶を帯びた声に、わざとだとわかっていても城之内の顔は熱くなる。

「・・ぅあ・・な・・!ばっバカじゃねーの!・・そんな、コト・・・」

耳にが熱くて、熱くて、可笑しそうに笑う海馬の声ですら甘く感じる。

『それだけだ。電話代かかるんだったな。切るぞ?』

「え・・・待てよ!」

城之内は思わず引き止めてしまう。引き止めてから、すぐに後悔する。

『どうした?』

「・・・・・・・あ、その・・っ」

言いたいコトは正直沢山ある。しかし思考がぐるぐるまとまらなくて城之内は少しパニックを起こす。

「っ・・おおおお前なんて明日居なくたって全然寂しくなんかねーからなっ・・・会わなくたって、別に・・オレは、全然へーき・・・」

嘘だ。
会いたいし、寂しいし、平気じゃない。

でも口からは溢れる素直になれない言葉たち。

『馬鹿が・・』

「なんだとー!?」

海馬はしばらく、馬鹿だの凡骨だの嫌みなことばかりを言う。

「うるせー!なんなんだ、てめぇ!もう切るからな!」

聞きたい言葉はそんな言葉じゃない。
電話を切ろうとすると、今度は海馬が止めてきた。

『聞け、城之内。』

「断る!!」

構わず切ろうとボタンに指を重ねた瞬間に、本日二度目の爆弾投下。

『好きだ。』

堪え切れずに電話を切った。

ズルズル道の端に座り込んで口元に手を当てる。

「・・バカヤロ・・・・・・」

アイツはいつも、オレの望むものを与えてくれる。

どんなに忙しくても、大変でも、気に掛けてくれる。

そんなアイツをオレはー・・・。

城之内はもう一度電話を掛けなおそうとして・・・しかし通話ボタンが恥ずかしくて押せず、メールを開く。
そして短いメールを遠くにいる海馬に送った。


20**/ 1/24 19:00
from 城之内
subject 無題
――――――――――――――
仕事、がんばれよ。







オレも、好き。
―――END―――


携帯を開いた海馬は優しげに微笑んでメールを読み、パチンと携帯を閉じて仕事に向かった。

今晩でこの仕事を終えれば、明日の出張帰りに少しだけ会えるかもしれない。
自然にパソコンを打つ手は少し早くなった。

愛しい馬鹿に会うために。





自宅に着いた城之内は布団に倒れこむ。
まだ耳に、海馬の声が残っている。

ちょっと声が疲れていた。
忙しいのだろう、無理はして欲しくない。

「・・・頑張れ。」

仕事をするアイツを想う。
仕事は大変だろう。
なんせアイツはトップに立っている。全ての責任を負う立場にだ。

一介のアルバイターとは比べものにならないだろう。

負けるな、無理すんな、頑張れ。

応援をすることしか、自分にはできないけれども。

頑張れ。

疲れても、辛くても、自分の望んだことだからと、アイツは無理をするだろう。

だから今度会った時は、他愛ない話をして、ケンカして、デュエルしてやる。

それで・・それで

好きって今度こそ直接言ってやるんだ。


今日も1日お疲れさま。


END







久々の海城ー 

これは3月位に仕事の研修いそがしそうな相方とかにお疲れさまって気持ち込めて書こうと思ったら、イベント準備でわーわーしてたら自分自身の仕事が始まっちゃってわーわーしててようやくできたという 

ケータイでメール打つ社長とか城之内くんとか想像して違和感を覚えたのは内緒←





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