「いったぁぁぁい!!!」

ガッシャン!という効果音と共にラリーの悲鳴が、遊星たちのアジトの地下鉄構内に響き渡る。

遊星はDホイールをいじる手を止めて、顔を上げる。

「ナーヴっ や、やめてったら!うぁっ」

「こうしないと抜けねーだろ!」

「無理〜っ痛たた!」

遊星が声のする方に行くと、苦痛に呻くラリーとラリーを押さえるナーヴがいた。

「・・・・・どうした?」

遊星が声を掛けると、ナーヴは「見てのとーりだ」と答える。その手には何故か包帯があった。
よく見ると、血がついたガラス片と足から血を流したラリーがいた。

「ラリーのヤツ、重いからやめろって言うのに工具箱運んで・・・転んで遊星の捨てたジャンクの入れ物に突っ込んだんだよ。」

部屋の端でブリッツが、ラリーが突っ込んでぶちまけたらしいジャンクゴミを拾いながら説明する。

「んでガラスが足に刺さって、ナーヴが治療してんだ。」

タカが薬をナーヴに渡して、遊星に向かってラリーの悲鳴の理由を教える。

「つ〜!しみるっっ」

「スパッと切れたから縫わずにすんだけど、もう無理すんなよ。」

包帯を巻き終えたナーヴはラリーの頭をポンと軽く叩く。
その拍子にポロリとラリーの瞳から涙が零れる。

「男がこんくらいで泣くなよな。」

「だって・・・い゛だい」

涙が止まらないのか、ラリーは袖で目を擦りながら思い出したように顔を上げる。

「ゆうせぇ・・・!」

「何だ?」

もう怪我しないように不要なジャンクはすぐ外のジャンク山に処理しようと考えていた遊星は、ラリーに呼ばれたので足を怪我して上手く動けないラリーの元へ駆け寄る。

「・・・涙の止まる、おまじないして。」

遊星はその言葉を聞いた瞬間、固まる。

「おまじない?痛いの痛いの飛んでけーってか?」

ブリッツが茶化して言うと、ラリーが「違うよ」と頬を膨らませる。

「また涙止まらないから、して?遊星。」

「・・・いや、その・・・」

ブリッツやナーヴ達がいなければ、すぐにしてやるのだが・・・今は出来ない。

「なんだよ?んなに効果抜群のおまじないなのかよ。」

「そーだよっ・・・いったぁ!」

タカの質問に勢いよく答え、傷にしみたのかラリーは再び新たな涙を零す。

仲間たちの注目を浴びる中、ラリーは瞳を閉じて遊星に向かって顔を上げる。
明らかなキス待ち顔に、ナーヴが不審そうな表情になる。
だがナーヴの顔に遊星は気付かず、この状況をどう切り抜けるか、冷静な顔をしながら必死に考えていた。

遊星は覚悟をきめて、ラリーに近づく。

むにゅ

「・・・・・・・・・・・・」

ラリーのまぶたに落としたのは唇ではなく・・・

マシュマロだった。

おやつに貰ったのだが食べる気にならず、ポケットに入れていたのが功をそうした。

そのマシュマロをラリーの頬にも、ふにゅっとつける。

「・・・遊星・・・・?」

しかし更に不審な目が仲間たちから向けられてるのに気付くと、遊星は居たたまれなくなってラリーを抱えてアジトから出て行ってしまう。

「な、なんだったんだ・・・?」

「・・・さあ?」

「遊星も疲れてんかな・・・」

残された3人は、呆然と遊星たちが出ていったドアを見つめていた。


その後、ラリーはこのおまじないは2人きりの秘密のおまじないだと遊星に教えられ、もう二度と人前でおまじないのコトを言わなくなったとか。

END



こんなにラリーは泣きませんねorz
痛くて泣くのは龍亞くんのほうでした・・・。






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