男なのに、童話に出てくるお姫様のように真っ白な肌。
穢れのない無垢ないろ。
京介を初めてみたとき、素直に綺麗だと思った。
盗んで、盗んで盗んで・・・罪にまみれたオレは真っ黒なカラダ。
この罪の色が、白を汚さないか、怖い。
盗みをしたことを後悔はしていない。むしろ、これからも盗み続けるだろう。
引き返すにはとっくに遅すぎた。
近くにいたいのに、京介と一緒にいると京介まで汚してしまわないかと、急に怖くなる。
* * * * *
「おらぁ!!」
クロウは4人目のデュエルギャングを殴り飛ばす。サテライトの濁った夕陽を背に立つクロウの姿に残りの男たちはたじろぐ。
凶器をもった残りの5人の男たちは、自分たちが有利なハズなのに「かなわない」と感じさせられてしまう。
クロウがこんなことになったのはつい数分前。
チーム・サティスファクションのテリトリーを見回っていたら、奇襲をかけようとした(以前フルボッコにした)デュエルギャング達とばったり会ってしまったのだ。
持ち前の素早さと小回りで何とか4人は倒したが、なかなかキツい。小柄なクロウは上から押さえ込まれたら、一発で終わりなのだ。
「オイオイこんなもんかよ?デュエルも三流、ケンカも三流ってか!」
クロウは残りの奴らが落ち着きを取り戻して集団でかかってこないようにわざと挑発する。
「調子に乗んなよクソガキ!」
見事に理性を吹き飛ばした相手にクロウは歯を見せるように笑う。
「ばーか!そんなパンチじゃこのクロウ樣は倒せねーぜ!」
ブンブン四方八方滅茶苦茶に振り回す拳を避けながら蹴りをお見舞いする。
これなら何とかいける、とクロウが思った時、後ろからのんきな声が聞こえてきた。
「クーローウー!楽しそうなコトやってんじゃん?」
高いジャンクの山の上で腰に両手をつけたポーズの京介がいた。
楽しげな声とは裏腹に、表情は侵入者を見据えたリーダーの顔であった。
その温度差にデュエルギャング達は恐怖を覚える。
「やりたいなら交代してやろーか?鬼柳。」
「えぇー。仲良く一緒にやろうぜ、クロウ?」
ジャンク山から器用に降りてきた京介はクロウの横に立つ。
「くそ・・・!鬼柳までっ」
「あ、相手は2人だっ一斉にやっちまえ!!」
2人の笑みに気付けなかった男達は、のちに自分たちの軽率な行動に激しく後悔する事になる。
「は〜疲れた。」
京介はファーのついたジャケットを脱いで、額の汗を腕で拭う。
「だっらしねぇな。リーダー。」
座り込んでいる京介をクロウは見下ろして苦笑する。
侵入者たちは結局泣き言を捨て台詞に去っていった。
ちなみに京介は肉弾戦がそれほど得意ではないので、先ほどの戦いで疲れたらしい。ただどこも負傷しない所が京介らしいが。
「・・・・・・・・・・ところでクロウ」
「ん?」
「それ」
京介が指さした先は、クロウの腕だった。
腕から少し血が流れていたが、たいした怪我ではない。何もしなくても血は止まるだろう。だが意識してしまうと、地味に痛くなってくるのが傷だ。
「早く帰って手当てしよう。」
京介の言葉にクロウはぎょっとする。まだ見回りは残っているし、逃げた奴らの残党がいるかもしれない。
「大丈夫だ、鬼柳。こんなん舐めときゃ治るぜ?」
京介は納得いかないような顔になる。
それでも平気だとクロウが何度も言いはると、なお京介は不機嫌になった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・なら舐めてやろーじゃねぇか。」
「はぁ!?」
京介の目が妖しく光ると、上からクロウを押さえつける。
クロウはいつもこの体格の差が恨めしい。小柄な体は容易に押さえ込まれてしまうからだ。
「何考えてんだよ馬鹿鬼柳!放せこらぁ!!」
京介は力を緩める気は全くないようで、鼻が触れ合うか触れ合わないかのスレスレのところまで顔を近付ける。
「やーだね。ちゃんと治療する気のないヤツの言うことなんか誰が聞くかよ。」
京介は怪我をしたクロウの腕を持ち上げ、舐め上げる。
「・・・っ!」
ピリッとする痛みにクロウは思わず顔をしかめる。
「痛かった?ならもっと優しくしてやろーか。」
「うっせぇ・・・!」
京介を睨みつけると、京介は自分の唇についたクロウの血をぺろっと舌で拭う。そして笑む京介の姿は妙に艶めかしかった。
「吸血鬼かよ、バカ鬼柳っ」
減らず口を叩くと、意地の悪い笑顔の京介が再び傷に舌を這わせてくる。
クロウの体がびくりと震える。
「・・・・・っあ・・・・!く・・・!」
舐められたところがジンジンする。この疼きは、痛みなのか何なのかクロウにはわからない。
「やめっ・・・!いっ・・あ・・・鬼柳っ!!」
クロウの瞳にうっすら涙が浮かぶ。妙に恥ずかしくなってきて顔が赤くなっていくのを感じるが、自分の意志で抑えることができない。
京介はその表情に思わず生唾を飲む。
「クロウっ・・・その顔ヤベェ・・・!」
「・・・っざけんな・・・!」
クロウは京介をキッと強く睨み付ける。しかし京介は怯むどころか自らの手をクロウの服の中に滑りこませる。
「・・・クロウ・・オレ、もう・・・!」
「な・・・・・!」
―――プツン。
クロウの中で何かがキレた。
羞恥心の限界か、話を聞かない京介に腹が立ったのか、原因は定かではないが・・・。
「・・・〜っっこんな外で発情すんじゃねぇ!!変態!!」
ゴッ!!
クロウの拳が見事に京介のアゴにきまる。そしてさらに膝で京介の鳩尾(みぞおち)を打って、自分の上からどかす。
「こんな誰でも見れる所で何する気だ!アホ鬼柳!!死ねばか!!」
蹴られた腹をおさえながら、京介は呆然とクロウを見る。
「えっココで拒否!?この流れでおあずけ!?なんで!?」
「なんで、じゃねぇよ!!冷静に今の状況考えろ!!」
京介は真面目に少し考えてみる。クロウはそんな京介に拍子抜けする。
もっと泣き叫ぶと思っていた。
が。
「やっぱココは快楽に身を委ねて抵抗しつつ感じるとこじゃねーの!?他人に見られたらどうしようっでも感じる的な・・・」
「お前もう消えろ!!ドコのエロ本だボケ!」
泣き叫ぶ時間が遅れただけのようだ。クロウはもう一発京介の頭に拳を叩きつける。
「ひでーよクロたんっ野外だって案外燃え・・・」
「ひでぇのはお前の脳内だ!あとクロたん言うんじゃねぇぇ!」
このままではラチがあかない。
もう遊星たちのいるアジトに帰ろう、とクロウは判断した。
「もうクロウっかわいーなぁっ」
懲りずに肩を抱いてくる京介に再び殴ろうとしたら、止められる。そして耳元で小さくささやいてきた。
「・・後ろの廃墟に2人、ジャンク山に1人、左右の潰れた屋台に1人づつ。」
・・・・・囲まれてる。
逃走した奴らはご丁寧に仲間に自分たちことを伝えたようだ。
仕返しを求めて。
先ほどの雑魚とは違うようだ。デュエルディスクを一人一人持っている。
「どうすんの?鬼柳。」
京介はいつもの余裕の笑みをニヤリと浮かべる。久しぶりに手応えのありそうな奴らと戦えて嬉しいのだろう。
クロウも他人のコトを言えないくらいワクワクしていた。
「もちろん、受けて立つぜ。」
「そうこなくっちゃ。」
京介はクロウから手を離して、仁王立ちになる。
「おい!おまえら出てこい!」
京介の大きな声にビクリと震えた侵入者たちは、警戒するように出てくる。
「6人か・・・上等だな。」
クロウがデュエルディスクを構える。怪我した腕がディスクをつける方でなかったのは不幸中の幸いだ。
京介もデュエルディスクを腕につけ、デュエル用の手錠を回す。
「満足させてくれよ!?クロウとの二人っきりの甘い時間を潰したんたからよっ」
「何が甘い時間だっバカ野郎!」
相手は6人の中から2人を選び、デュエルディスクを構え直す。
「「「「デュエル!!」」」」
こんな時間が、一番落ち着く。
クロウはデュエルをしながら心の中で思う。
京介と協力して強いヤツを倒し、笑い合う。そこに遊星やジャックも混じってばか騒ぎして、また笑って。
今まではそれだけで十分だった。
でも、今は違う。
ふと目で追ってしまうのは、どこまでま目立つ淡い碧の髪。 誰よりも白い肌。
最初は目立つからだと思ったが、違うことにそのうち気付く。
自然に、魅せられているんだと。
綺麗な指先に、形の良い唇に、時折妖しく光る金の優しい瞳に、京介の全てが、見たくて・・・オレだけのものにしたいと思ってしまう。
こんなコト、絶対に言えない。
クロウはデュエルしながら横目で京介を見る。
するとそれに気付いた京介がニッと笑いかけてきた。
ビックリしたクロウはつい口の形だけで「ばーか」と伝える。
デュエルに集中しよう。
そうすれば、へんなコト考えずにすむから。
END
なんだこれはorz
大好きなクロウに申し訳ない・・・。
もっと漢前なクロウを書けるようになりたい!!
なんですかね、あたしの書く京介は発情期まっただなかの模様で、気を抜くとエロに走りそうになるのです・・・。
作者の脳内のせいなのでしょうかorz
ここまでお読み下さりありがとうございます。
最後に・・・京クロ大好き!!←