捏造。Wが身長低い理由とか。












今日はつまらない。
紅茶を注ぎながら、Vは瞳を伏せた。
Wはナンバーズを奪いに、トロンとXは何か部屋に籠って難しい話をしている。本当はWについて行きたかったのだが、今日はトロンにホテルで休んでいるよう言われた。

Vは兄弟で一番幼いわが身が嫌いだった。

ナンバーズ集めで最も疲れているのはWだが、今一番成長期のVはデュエルで身体に負荷が掛かってはいけないと時折トロンに制限される。
Wが年齢よりも成長が遅れているのも、人並み外れた科学力を使用したデュエルの負荷が原因ではないか、とトロンが考えているからだ。
Wは自分の成長が遅れた事に気づいた時には遅かった。まだ成長期ではあるので、ナンバーズ集めをやめれば成長の遅れは止められるかもしれない。
しかしナンバーズは誰かが集めなければならないし、XやトロンはWやVが出来ない難しい仕事がある。

『てめぇなんかに任せられるかよ。ナンバーズはオレの獲物だ。』

Wはそう言ってナンバーズ集めを自ら買ってでた。だが性格と違い弟には甘いWのことだ、VがWのように成長を妨げられないよう自らの身体を犠牲にしたのだろう。

Vは兄も通った道なら自分も、と思うが、トロンもWもそれを許してくれない。

「荊(いばら)の道だって、僕はW兄様についてくのに…」

Vは1人紅茶の水面を見つめて、歪んだ自分の顔に驚いた。慌てて顔を上げて窓を見ると、黄昏時をむかえたのか、ハートランドシティ全体がオレンジ色に変化していた。

「…W兄様、ご無事でしょうか。」
「呼んだか?V。」

振り返るとニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべたWが部屋の入り口に立っていた。わざと気配を消して入ってきたのか、全く気づかなかった。

「W兄様!お帰りなさいませ!」
「ああ、ちゃんと休んでいたか?V。」
「つまらなかったです。次はボクも連れてって下さい。」
「トロンが良いって言ったらな。」

Wが疲れたようにソファーに座り込む。今日も多くのデュエルをしてきたのだろう。

「お茶淹れますね。」

そうしてVが紅茶を用意して戻ってくると、Wはソファーに倒れ込むように横になっていた。

「W兄様!」

悲鳴の様な声をあげて、Vは兄の元へ駆け寄る。いつもより色のないWの顔に触れると、酷く冷たい体温にVは青ざめる。

「兄様っ大丈夫ですか…!W兄様!」
「喚くな…平気だこんなもん。」
「いいえっ平気なんかじゃありません!」

ベッドへ連れていこうと、Wの脇に手を入れて肩に腕を回させようとするが、WはVを振り払い、拒否をする。

「余計な真似をするな、紅茶くれ。」
「ですが、兄様…っ」
「V!」

Wに睨まれて、Vは渋々引き下がる。淹れたばかりの紅茶のカップを兄に渡しながら、今度睡眠薬でも混ぜておこうかと本気で考えた。

「ったく…今日もどいつもこいつもヘボだらけ……もっと骨のあるやつは居ないのかよ。」
「ナンバーズは集まったのですか?」
「何枚か、な。だがほとんどはグズだ。ファンサービスのしがいもねぇ。つまらん。」

紅茶を一気に煽るように飲み干すと、Wは再びソファーに倒れる。
VはそんなWに覆い被さるように抱き着いた。

「W兄様…明日はお休み下さい。このままじゃ本当に身体を壊してしまいます。明日はボクが…」
「駄目だ。」
「いやです!」

抱き締める兄の身体は、もうVとほとんど変わらない。
昔はもっと差があった。兄は大きくて、頼もしくて、Vには手の届かない存在だった。
しかし今は、身体全体、重ねた手も、肩幅も、僅かにWが大きいだけだ。
それをWが気にしているのも知っている。

「重い。V、離れろ。」
「…昔は軽いと言って下さったじゃないですか。」
「今は違うだろ。お前だってぐんぐんでかくなって、顔に似合わずちゃんと筋肉だってついてる…」

Vが成長するのはWが望んだこと。だが、羨む心も確かにWの中に存在していた。

「…………………兄様、今月は何センチ伸びました?」
「…嫌みか」
「ナンバーズを集める為、多忙になってから、何センチ伸びましたか…!?」
「うるせぇな!」
「W兄様!!」

Vが泣き出しそうな声を上げると、Wは顔を背けながら、小さく答える。

「…………………………………伸びてない。トロンには黙ってろよ。」

最悪の答えにVは唇を噛んだ。口内に広がる血の味も気にならない。

「…なんで、兄様……いやですっどうして…!」
「計画はもう動いている。復讐まであと少しだ。」
「だからって…これ以上身体に異変がでたら計画どころじゃありません。」

口惜しい。VはWの髪に触れながら、小さく身体を震わせる。
この髪、1本1本も成長が止まっているかもしれないと思うと、急に貴く感じる。

「そんなシけた面するな。お前が傷ついた顔をするのは不愉快だ。」
「…すみません……W兄様…」

Wに心底嫌そうな顔をされたので、Vは無理にいつもの笑顔を作る。複雑な心の中に対して、笑顔は上手く作れたと思う。
しかし、Wはさらに眉間のしわを深くした。

「さっきの面のがマシだな。なんだその顔は…。」
「え?」
「作りモノを見るくらいなら、泣き顔を見る方がまだいい。」

我がままにもほどがある。悲痛な顔を嫌がられたので笑顔を作れば気にくわない、と。Vは困ったようにため息をついた。

「なんて自分勝手な…」
「仕方ねえだろ。兄に振り回されるのは末っ子の宿命だ。」

Wは手を伸ばすと、Vの背中に腕を回す。

敵が多いWは、兄弟にしか心を許さない。…Wだけではない、自分達兄弟は互いに依存しあって生きている。
そうでもしないと、この世界は息苦しい。

「いくらお前がXみたいにでかくなっても……お前はオレの弟だからな。」
「はい、W兄様。」

胸にVを抱きながら、Wは今は見えないVの手の甲の紋様を一つ一つ丁寧になぞる。
極東エリアのチャンピオンとして、綺麗に手入れされている指が見えないはずの紋様をなぞる様子を、Vは固唾を飲んで見守った。

「そんなに確かめなくても…」
「減るもんじゃねえだろ。」
「…なんでボクの紋様覚えてるんですか。」
「お前だってそうだろ。」

Wはなぞるのをやめると、自分の手の甲をVの前に差し出す。
Vは観念したように肩を竦めた。

「なんでわかるんです?」
「兄弟だからな。」

VはWの手を取ると、ゆっくり見えない紋様に指を滑らせる。

「悪趣味ですね。」
「そんなに褒めるな。」

紋様をなぞり終えると、Vは兄の手の甲に唇を落とす。
それは忠誠的なキスであり、親愛的なキスであり、背徳的なキスであった。

「いつまでもW兄様の弟でいさせて下さいね。」
「後悔するなよ。」

例え、身も心も貴方より大きくなったとしても、自分の気持ちは変わらない。
いつまでも貴方の忠実な弟でいましょう。

本物の笑顔をいつか貴方に見せられるように。




END





















3月4日なん日前だよ…
ここまで読んで下さりありがとうございました!!





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