昔誰かがこう言った。
「嘘をつくと地獄の閻魔様に舌をひっこ抜かれるぞ」と。幼い私はそれを本気にして絶対嘘をつくものかと誓った。だって、舌をひっこ抜かれるなんて痛いに決まってる。そんなの御免だ。

「よく言うぜ嘘つきめ」

人のことを堂々と嘘つきと呼ぶ目の前のコイツだって。お前こそ嘘つきの癖に、私のことを嫌い大嫌いだと言うのなんて嘘に決まってる。分かっているんだよ、君の思っていることくらい。私は君を愛しているからさ。

「嘘つき」

まだ言うか。私は君を愛しているけれど、君はときどき分からないことを言う。私が君を愛していないだとか、死んじまえだとか?これが巷でよく言うツンデレというやつなのだろうか、ただ君の場合はツンの方が割合が高いのだろうけど。私が君を愛していると言えば君は私を嫌いだと言う。君を殺してでも傍においておきたいと言えば君は私を狂っていると言う。
でも、分かっているのだ。
これは晴矢の嘘。
本当は私のことが好きで好きで堪らないくせに照れ隠しでそんなことを言ったり。別に私は気にしない。その嘘も、君の愛なんだろうから。

「私は正直者なつもりだけどね」

私はただ正直に、君に愛を囁く。足りないくらいだ、私の「好き」を全部全部、空っぽになるまで伝えるのに何年、何十年かかるのだろう。きっと、それでも足りない。晴矢への想いはそれだけでは、言い表せないのだ。でも晴矢は恥ずかしがり屋だからなかなか私に「好き」をくれないけど、それでも良いんだ。晴矢は私を愛してくれている。それは分かっているから。ああ、好きだ。晴矢が、好きだ。

「愛しているよ」

君の燃えるような紅蓮の髪も、吸い込まれてしまいそうに輝く黄金の瞳も。それらが良く映える白い肌に、何人にも屈しない心。「敵」を見据えるその鋭い眼孔におそらく誰をが魅了されてしまう。残虐的な、その鋭い瞳に引きずりこまれてしまうよ。私はそんな君の何もかもを愛しているのだけれど。

そして私は今日も君に愛を囁く。私が君に「好き」を与える度に、君のその射抜くような黄金が揺れるのは、きっと、彼も私を愛しているからだ。


橙色のような嘘


風介はオレに、嘘の「好き」をたくさんくれる。オレは風介が好きで、大好きで、愛しているけど、風介が好きなのはオレじゃない。風介が見ているのは、何年も前にオレが殺した、残虐的で最低な、バーンなのだ。



(それでも互いに嘘をつきながら、)
(だってお前が好きだから)









企画すずなぐいろ!様へ提出させていただきました。



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