瓦礫と傀儡に囲まれて倒れるのは、間違いなく自分が愛した赤色だった。
「…哀れなもんだな、うん」
哀れで、無様だ。
何が永久の美だほざきやがれ。一生残るものこそが芸術だと説教染みだ芸術論をいつも突きつけてきた、今まさに地面に突っ伏している奴は死んだ。なんだ、こんなに脆かったのか。
「随分繊細な芸術だなサソリの旦那」
返ってくる言葉は勿論ない。当然だ、奴はもう死んでいるのだから。
死んでいるのをいいことに、俯せで倒れている顔を横にしてみるとなんとまぁ可哀想なことに顔にヒビが入ってる。あらら、自分自身が芸術だったのに。何 傷物にしてんだよ、うん。勿体無い。
だけどそれでも。死んでいても奴は美しい。本当に人形になってしまったようだ。良かったじゃないかサソリの旦那。念願のお人形になれて。嬉しいかい?少なくとも今オイラは最低最悪の気分だ。
「オイラは旦那に人形になってほしくなかったからな」
こんなこと生きてる旦那に言ったらオイラが死んでるけど。旦那はもう死んでるからオイラがここで死ぬ心配はない。
旦那の言う永久の美ってのは分からないし分かりたくもない。永遠に朽ちることのないものなんて無いってこと、知ってるから。でもそのことを一番良く分かっていたのはサソリの旦那。
「馬鹿だなぁホント。何死んでんだよ、うん。バーカ。阿呆。間抜け」
覚えてる。馬鹿も阿呆も間抜けもその他諸々、全部旦那に言われた言葉。立て続けに罵声が飛んできたもんだ。
「まだですかぁ?ゼツさんもう行っちゃいましたよ」
「五月蝿えトビ。馬鹿阿呆間抜け」
なんだとこのクソ傀儡、とオイラも返してたけど、旦那は絶対に、最後はオイラの頭を撫でてきた。偉そうに。
旦那の頭、触ることなんて滅多に出来なかったなぁ。なんて。
死んでしまってから初めて旦那に好き放題触ることが出来た。さっきから五月蝿いトビ。少し黙れよ、今ちょっと傷心なんだから。
さよならまであと3秒(先輩 3秒ですよ3秒。3秒で立ち直って下さいね)
(五月蝿ぇな無理に決まってんだろ)
ああこんなこと、絶対調子に乗るから絶対言わなかったのに。まさかオイラより先に死ぬとは思わなかったからさ。やっぱり言っとけば良かった。
旦那、大好きだった。
多分これからも。
***
芸コン企画に提出
先輩が生意気なのと
旦那が一言も発してないのと
トビがやたらウザい件
企画参加させていただきありがとうございました!
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