涼←南



とうとう8月の31日。
朝方はだいぶ涼しくなってきたが、やっぱり昼間は元気に蝉も騒ぐし太陽も元気だ。明日からまた学校が始まるという憂鬱感もあるし、はたまた久しぶりにクラスの奴らと会えるという楽しみもある。オレは割と学校が好きだ。もう宇宙人の演技をしている必要だってないし、幼なじみの茂人だって同じ学校に入学した。オレは充実した高校生活を送っているのだ。

「…あっちぃ」

近所のコンビニまで行くため勇気を出して家から出てみたが思った以上に暑かった。ちくしょう、夏も終わるってのに。なめてたぜ、普通にあちい。
コンビニの袋に入ったアイス。早く帰らないと溶けちまう。そういえばアイツ、アイスばっかり馬鹿みたいに食ってたな。
アイツとはFFIが終わって、韓国から帰国しておひさま園を卒園してからもう会っていない。頭の悪いオレと違って頭は良かったから結構良い高校に進んだらしい。近いといえば近いけど、近所でも全く見かけない。

今思えば、オレの一番近くにいて、唯一何に対しても全力でぶつかり合えたのはアイツだけだ。きっとそれはこれからも変わらない。全力でぶつかり合って、支え合って、何かに本気でぶつかることの楽しさと嬉しさを分かち合った。

ああ、会いてえなあ。
なんて思ったから?暑さでぼやける視界に、よく知ってる銀色。あの色は間違いない、アイツの色だ。暑さで頭がイカれたのか?だってだって、あれは間違いない。
口を開きかけた。
アイツは横を見て、顔を緩めた。
滅多に表情を崩すことはなかったのに。
アイツに歩み寄る、アイツと同じ学校の制服を来た可愛らしい女の子。
お揃いのキーホルダー。

…なんだ。

「風介」

充実した高校生活、送れてんじゃねーか。あんな顔、オレにも滅多に見せてくれたことなかったのに。なんだかなあ、アイツがあんな顔で笑ってるから安心したのと嬉しいのと、何故か少し、ほんの少し、寂しい。

「ばーか」

振り返らない後ろ姿に呟いた。


夏が終わる。









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