「源田、佐久間」

廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。その聞き覚えのありすぎる声に素早く振り向いて、息を大きく吸い込んで。

「鬼道さんっ!!」

神々しい…!鬼道さん相変わらず眩しい!鬼道さんはあたしの尊敬する人。同い年だけど…カリスマ性とか周りの人間を率いる統率力?とか。そんなの全部ひっくるめて、ずっと昔から憧れの人。

「鬼道、久しぶりだな」

「ああ。最近多忙でな…」

生徒会長でもある鬼道さんは忙しい。ちなみに源田とあたし、鬼道さんは出身校も同じで初等部からの付き合いだ。

「少し厄介な生徒がいてな。ソイツに手をかけっぱなしなんだ」

「珍しいな。お前を手こずらせるなんて」

「だっ誰なんですかソイツ!そんなの鬼道さんが手にかけなくてもあたしが八つ裂きにしてやりますよ!」

「八つ裂きって…、…!」

苦笑する鬼道さんの視線があたしの後ろにいったと思ったら、目つきが変わった。

「…校内で堂々と喫煙とはいい度胸だな、不動」

振り向くとそこには1人の女子生徒。もしかして、鬼道さんが手をかけている厄介な奴っていうのはコイツ?
ふわふわした黒い髪にメッシュをいれて、バッチリしたアイメイク。シャツも胸元まで大きく開かれてスカートは勿論短い。加えて何故か素足だし大きなリング状のピアス。校則違反という文字が具現化したような奴だ。しかもタバコが手に。

「アハッ、見つかっちゃった」

「全く、久しぶりに登校してきたと思えば…喫煙は止めろと言った筈だ」

「そーだっけ。」

何だろう、何か鬼道さんを見下す感じ。こ、コイツむかつく…!

「おい、鬼道さんに失礼だろ!何様だ!」

「こら佐久間!」

源田が何か言ってるけど知らない。ていうかこんな奴学校いたのか?今まで野放しにして鬼道さんに手を煩わせるなんてとんでもない失態だ。

「なーに鬼道クン、このチビっ子」

「ちびっ…!?」

「煽るな不動。佐久間も」

「で、でも鬼道さん…むぐっ!?」

「悪いな鬼道。それと…」

後ろから源田に羽交い締めされて口も塞がれる。もちろん力は緩められてるけど苦しい。ていうか、あんまりその引っ付かれるとだな。し、心臓が。

「フドウ。へぇ、なかなかイケメンじゃん。やるねちびっ子、彼氏?」

背の高い源田を覗き込んで抑えられてるあたしをジロジロ見てくる。なんだコイツは。美人だけど。

「ぷはっ、ていうかちびって言うな!これでも高2だしそれに源田はか、彼氏とかじゃないし!」

「ありゃ、同い年?悪い悪い中学生くらいにしか見えなくてさぁ」

「お前ーっ!!」

「あっ止めなさい佐久間!!」

「はぁ……」

まるで人を茶化して怒らせて楽しむような嫌みなヤツ。(美人なのは認めるけど…)むかつく!









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