「おはよう今日も可愛いね晴矢!眩しいよ!」

「晴矢に寄るな変態!」

涼野と厚石に加わって南雲に激しい恋心を抱く輩がまた増えたらしい。モテ期だな、南雲。

「韓国からの転校生だそうだ。モデルかと思ったら男子らしい」

「なんでセーラー着てんだろうな…」

南雲は雰囲気とか言葉遣いとかで誤解されがちだけど、本当はすっごい優しいし友達想いだし、案外世話焼きだから人気があるのも分かる。一年生の、みどりかわ?っていう子も南雲によく懐いてるし。南雲は可愛い。うん。

「南雲も大変だな朝から」

苦笑する風丸の唇に自然と目がいく。
グロスかリップでも塗ってるんだろう、ほんのり桜色の、艶のある綺麗な唇。よく手入れしてるんだろうな。ずっと見てたから風丸が気付いて、ん?とこちらを見た。

「風丸、唇超キレーにしてんな」

「へっ?あ、そう、か…?」

「うん。めっちゃキレイ」

そうなかあ、と言って少し照れる風丸も、可愛い。風丸は美人系か?でもなんていうか、常にこういうことにぬかりがない。女としての自覚がしっかりしてんだよなあ…あたしと違って。

「やっぱさあ、いつでもキス出来るようにしてんの?豪炎寺と」

「ばっ…バカ!そんなこと…っ」

どんどん語尾が小さくなって、湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にする風丸が可愛くて、それでいて貴重だ。風丸はあたしや南雲と一緒にいても一番大人っぽい。でも豪炎寺の話になるといつもこう、乙女全開だ。

「可愛いなコラー」

「…佐久間…」

頭をわしわしと(背伸びして)撫でてやると風丸はやれやれといった感じで、逆にあたしの頭に手をおいた。

「…まぁ…好きな人に可愛く見られたいってのは、あるかな…」

デレたよ。

「佐久間もさ、そうだろ?」

恋をする女の子は、唇がキレイなんだとどこかで聞いたことがある。
ほかにも肌がすべすべだったり、爪がぴかぴかだったり。あたしは色黒だし爪だって特に手入れしてるわけでもない。…胸だって小さいし。
でも、確かに、アイツに、可愛いって思われたたりしたら、そりゃあ多分あたし幸せすぎて死ぬな。そんなことないだろうけどさ。



(おおきくなったら、ツギノちゃんとけっこんしたい)

(こーじろーと?)

(うん。いや?)

(やじゃない!けっこんするー!)

(やったあ!じゃ、やくそく!)

(うん!ゆびきり!)



「(……バカみたい)」

なあ、源田。
お前なんでそんなカッコ良くなっちゃったんだよ。

「(いつまでもあたしだけのもの、って思ってたんだよなあ)」

本当に、ガキだなあたし。





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