「源田くん」


昇降口で、源田が一学年上の女子の先輩に声をかけられた。


「あの、今日って放課後何かあるかな」

「え…あぁ、部活は休みですけど」


今日は1日部活のない日だ。きっとこの先輩は知っていたのだろう、あえて知らないという風を装っているが。しかし単純な源田のこと、まんまと源田を放課後呼び出すことに成功した先輩は、源田に見えない角度でしっかりとあたしを睨み付けた。まぁ四六時中源田と一緒にいるあたしが嫌いなのだろう。先輩だけじゃない。もしかしたらこの学校中の女子は全員あたしのことを嫌っているかもしれない。そりゃそうだ、自覚アリの唯我独尊女なんだから。だからあたしには友達と呼べる存在も小さい頃からなかなか出来なかった。


「佐久間!」


しかし、高校に入学して入ったサッカー部。女子は基本的にサッカー部は存在しなかった。だけどどうしても源田とサッカーを続けていたくて、マネージャーだけどサッカー部に入部した先、あたしと同じような子が、2人もいた。


「風丸!」

「おはよう佐久間」


その1人、風丸一露。
美人で、脚が凄く速い。本当は陸上部の特待生なんだけど、何かとサッカー部のことを気にかけてくれる。特待生だからサッカー部に転部することは出来ないが、風丸は本当にサッカーも陸上も大好きなんだ。
しっかり者の風丸は他の子と仲良く出来ないあたしによく話しかけてくれて、今ではかけがえのない存在だ。

そして、もう1人、南雲晴矢。
南雲は初対面こそ2人ともなかなか心が開けなくてぎくしゃくしたが、ふときっかけがあって、それから親友とも呼べる仲になった。南雲は男勝りで口もあたしに負けないくらい悪い。でもときどきふっと女の子らしさが出て、そこが凄く可愛い。思ったことははっきり言ってくれるから気があった。あたしは南雲がいないと生きていけないかもしれない。こんなことを言うと涼野とか厚石とか涼野とかに誤解されてしまうかもしれないが。


この友人2人のおかげでなかなか充実した学校生活を送れているわけだけれども、今のどうやら源田を狙っている先輩のようにあたしは結構他の女子から妬まれている。陰口や嫌がらせはもう慣れている、好きにやらせておけば良い。自己中で我が儘なあたしに付き合ってくれる源田は可哀想だ。あたしのせいだってことは痛いほど分かっている。でも、それでも、源田にとなりにいてほしい。心からすまん、源田。



いつかは、源田にも優しくて可愛い彼女が出来てしまうのだろうか。いつか離れてしまうのだろうか。それでも、


「(あのときの約束、あたしは覚えてる)」



「佐久間、HR始まるよ」

「ああ!」








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