くあ、とその容姿に似合わない大きな欠伸を堂々とかましながら道を歩くのは小柄な少女、佐久間次乃。彼女は道行く人が思わず振り返ってしまうような美貌の持ち主だが、その性格のためになかなか恋人というものが出来たことがない。性格のせい、でもあるのだが、本当は他にも理由がある。それは彼女の最大の弱点。



「こら、女の子なんだからそんな堂々と大口開くんじゃない」



今日の授業だるいな畜生、などといった考えはその声によって一気に佐久間の脳から吹き飛んだ。


「源田…先に行ったんじゃなかったのか」

「ああ、おばさんにそう言われたんだけど佐久間が寂しいと思って」

「なっ、んな訳あるか調子のんな!!」

「嘘嘘。オレが寂しかっただけ」


ニコニコと笑う、がっしりと逞しい体系で長身の彼は佐久間の幼なじみである源田幸次郎。この彼こそが佐久間の弱点。

佐久間は源田が好きなのだ。
しかし素直になれない性格のせいで思っていることと全く違う言葉を言ってしまったり罵声を浴びせたりしてしまう。それが、佐久間の悩みの一つだ。(ちなみに他の悩みとは褐色気味の肌色と小さな胸)


源田は優しい。だから源田は男女問わず人気がある。優しいし、男前。容姿も申し分無い。しかしお人好しだし天然なので周りから自分がそのような人気があることを知らない、今時珍しい純粋な天然(ボケ)なのである。だから佐久間はいつも気が気でならない。


「(そんなだからオレがこんな性格になるんだっつーの)」


随分ひねくれた性格なのは分かっている。周りのあまり親しくない女子から疎まれているのも知っている。優しい源田と自己中心な佐久間。釣り合わないのも分かっている。もっと性格も可愛くて、几帳面で、女の子らしい彼女が源田には相応しい。



自分の我が儘をいつも笑って聞いてくれる源田。小さい頃からずっと一緒だった。故に、源田のことなら誰よりも知っているのだ。


恋愛対象として源田の中にまず自分は含まれていない。









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