遠くで目覚まし時計の鳴る音がする。
南雲晴矢は最高に起床したくなかったが、朝が来てしまっては仕方が無い。ふかふかの暖かい布団から出たくはなかったが、仕方が無い。なんだかほんわりと暖かいものに包まれている錯覚が心地良くて、それでも仕方が無いから重たい瞼を開けるとそこには彼女の暮らす孤児院で幼い頃から一緒にいた、涼野風介の整った顔が間近にあった。


「………は?」

「おはよう」


少しの間を開けて、南雲の悲鳴が早朝、お日さま園に響き渡る。



お日さまにおはよう!



「信っじらんねー!!何勝手に女子の部屋に入ってんだよ!!しかもベッド入ってるし!!有り得ねー!!」

「私は晴矢を起こしに来て、あまりに晴矢が可愛い顔して寝ているからつい…」

「うるせえええ」


「はぁ…朝から元気な奴らだ」


味噌汁に入れるネギを刻みながら砂木沼治はこちらも朝から盛大な溜め息をついた。扉の向こうからドタバタと騒ぎ声やら何かが壁にぶつかる音やらで騒がしい。もう馴れたことだが。


「おはよう砂木沼さん!!」

「ああ、おはよう」


すると鮮やかな緑色の長い髪の毛を一つに束ねた少女が入ってきた。

「今日は早起きだな」

「うん、珍しくね!!手伝おうと思って」

「そうか、助かる」

早速食卓に皿や箸を並べ始める、緑川リュウ。彼女も、この早朝からの騒ぎに今更驚かない。


「おはよう」

「ヒロト!おはよう!」


次に入ってきたのは明るい赤の髪の毛が少し跳ねてしまっていた、基山ヒロト。学園ではクールでミステリアスな雰囲気を醸し出しているヒロトは実は欠伸をしながら寝癖も直さずふらふら食卓につこうとするごく普通な男子高校生なのだ。


「緑川は朝から元気だね…」

「ヒロトが低血圧なんだよ」

「うーん…でも朝から緑川の笑顔を見るとオレは元気になるよ」

「なっ…」


うん、鬱陶しい。
砂木沼は一人で頷き、調理を進める。


「不景気だ…な」


すると次に朝刊を片手に現れたのは青い髪の毛をした大人びた雰囲気を持つ、八神玲名。


「おはよう玲奈」

「玲名姉、おはよ!」

「おはよう」


さて、朝食も大体準備出来た。後は奴らを待つだけなのだが。


「ちょっ風介!!どけ!!」

「いいじゃないか」

「風介!!朝から何してるんだ!!」

「ふん、昨夜愛し合った我々の邪魔はもう出来ないよ茂人」

「は、晴矢…!?」

「おい嘘ついてんじゃねえ、茂人もマジになるな」


はぁ、と今度は全員が溜め息をついた。


「晴矢姉、愛されてるねー」

「異常な程ね」

「あいつらはそれぞれ自分の気持ちに気付いていないからな」

「面倒臭いなぁ」


いただきますを出来るのは、さぁ後何十分後だろうか。




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