大事な秘密2

少し酔いが回った頭で考えた。
スコールの言動の端々から、彼は自分のような貧乏人ではなく裕福な家庭のお坊ちゃんなのだと予想はしていた。だがそれはあまり考えないようにしていたし、クラウド自身もセフィロスの側で感覚が麻痺していたのだと思う。スコールの背景がどうあれ、それが理由で関係が変わることはないと思っていた。だから大きな屋敷を見せられた時には驚いたが逃げたりはしなかった。
だが大統領だなんて。職業に貴賤はないというが、それとはまた少し違う。突然突き付けられた事実にクラウドは途方に暮れた。答えは決まっている。後は腹を括るだけだ。その腹がなかなか決まらない。
「明日、不動産屋に行ってくる」
「ん?ああ」
「しばらく一人で考えたい」
だからスコールに連絡してくれるなと言うとバッツは笑顔でどんな時もお前の味方だと頷いた。
なかなか眠れない夜を過ごし、意識を手放したのは空が白くなってからだった。それからは悩んでいる割にはぐっすりと寝入ってしまい、生きているか確認しにきたバッツに起こされるまで眠っていた。
「いろいろとありがとう」
「いいって。あ、エプロンと靴下は洗ってスコールに返しておくな」
「…ああ」
それがこの件の元凶なのだが送り主の手前捨ててくれとも言うこともできない。それなりに楽しんだが今は見たくない。目の前からなくなるのなら何でもいい。
「じゃあ」
「引っ越しは手伝いに行くからな」
「ありがとう」
バッツに別れを告げて家を出ると、門の前に一台の車が停まっていた。その車の色を認識する前に車内に引きずり込まれる。声を上げる余裕もなかった。車はクラウドを乗せると動き出した。
後部座席でひっくり返っていたクラウドは起き上がると辺りを見回した。
運転席には大きな男、そして隣には褐色の肌の男がいた。細身だが目付きは鋭く、隙をついて逃げることは難しそうだった。
「クラウド・ストライフ君だね」
「……」
もしかして、誘拐だろうか。だがクラウドは誘拐される理由が分からなかった。実家は身代金を払えるほどの余裕はない。セフィロスの弟子だという話は割とよく知られているから身代金狙いならそちらか。
そんなことをつらつらと考えていると車が停まった。ドアはロックされてはいない。逃げるなら今だと腰を浮かせた瞬間ドアが開いた。
「…?」
「クラウド君!」
見上げた先に立つ人物の顔は逆光で見えなかった。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -