大事な秘密

クラウドはスコールに負い目を持っている。年上だとか、セフィロスの策略から守りきれなかったことだとか。そこにあの父が出てきたらまた一騒動ありそうだ。
「なあ」
クラウドが顔を上げる。それはすがるような目をしていた。
「スコールのお父さんてどんな人だ?」
会ったことがあるかと聞かれてバッツは言葉を失った。会ったことはある。今でも会えば普通に世間話をする。職業の割りに気さくだと思うが。
「大統領、知らないのか?」
「大統領?誰が?」
「…スコールの親父さん。顔見なかったのか?」
「そんな余裕なかった」
しばしの沈黙の後、クラウドはウォッカの瓶を掴むとグラスに並々と注いで一気に煽った。
「クラ…」
クラウドの気持ちを考えると二杯目を注ぐのを止めるのは気が引ける。酔い潰れて何も考えられなくなりたいのは分かる。だが相手の性格を考えると早く腹を括った方がいい。
「ちょっとストップ」
「バッツ止めるな」
「気持ちは分かるけどさ、多分親父さんは明日にでもお前に会いにくるぞ」
ぴたりとクラウドの手が止まる。そしておそるおそるバッツを見た。
「これからどうしたいのか、お前とスコールの気持ちを考えた方がいい」
「あ、あ…」
視線を落としながら頷くクラウドはすっかり落ち込んでしまったようだ。スコールの父親は多分クラウドに会いにくるだろう。だがそれはクラウドが考えているような用件ではない。
一度考えてみるのもいいだろう。結果がどちらに転ぼうといずれぶち当たる壁だ。
「知らなかった…普通のサラリーマンって言ってたから…」
「大統領だなんて言ったらびびっちまうだろ」
「ファミリーネームも違ったし」
「父親が有名人で親子だって知られたくない時に母親の姓を名乗ることはよくある話だぜ」
クラウドが呆然としながらぽつりぽつりと言うのを聞いてスコールの代わりに弁解したが、だんだんと責められているような気になってバッツは居心地が悪くなった。何でこんな大事な話を先延ばしにしておくのか。こういう話は遅くなればなるほど相手の不信感は大きくなる。
「親は関係ないって言われればそれまでだが…」
聞いた時に隠さず言って欲しかったと呟くクラウドは寂しそうだった。つい思わずゴメンなんて謝ってしまったが、冷静に考えるとバッツは悪くない。それでも申し訳ない気分になった。




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