magazine panic 2

ラグナが嬉しそうに雑誌を抱えていた。キロスやウォードも雑誌に笑顔を落として。
どこで聞き付けて、どうやって入手したのか。知りたいようで知りたくない。
デスクの上には段ボールがあり、きっと中にはその雑誌が、店頭に並ぶ前に買い占められたであろう雑誌が山の用に入っているんだろう。
「こんな可愛いクラウドくんを世間に陳列させちゃだめだよ!ストーカーが増える!もうクラウドくんはうちの大事なコなんだから!キロス、クラウドくんの周りの警備を強化しろ!ウォード、陳列される前に雑誌の回収を急げよ!」
言われた二人は頷くと電話に手をかけた。
ラグナは自分の仕事もそっちのけで、雑誌を読み耽る。
その部屋をドアの隙間から覗いていたスコールは静かにドアを閉めた。
「……」
クラウドをここに隠そうかと思ったが、過保護すぎる保護者はきっとクラウドを軟禁してしまうんじゃないだろうか。それは自分も彼も望んでいない。
自分一人でクラウドを守れるだろうか、相談しようとか、そう考えてラグナを訪ねてきたが、ここはここで危険だ。
「何かあったら、俺があんたを守る」
「何もないと思うけどな」
どこまでも過小評価な恋人にスコールは眉間のシワを深くした。

昨日、大学準備室で呆然とするスコールの後ろにいつのまにかいたバッツによって、人数分置かれていた雑誌は余ることなく配られた。
興奮する者、鼻血を出す者、言葉を無くす者、笑顔を絶やさない者、いろいろな表現によって、クラウドのモデルは評価された。
最後に部屋にきたクラウドは、少し驚いて、少し照れて、そして打ち明けた。
「スコールに、クリスマスプレゼントを渡したくて」
自分の力で稼いで、ちゃんとクリスマスプレゼントをあげたかった。
ぽつりぽつり語られるクラウドの言葉に、涙する者、抱き着く者、再び鼻血を出す者、やはり笑顔を絶やさない者、それぞれがクラウドを囲んだ。
スコールはただ、感動と感激と衝撃と衝動にかられてクラウドを抱きしめた。
「はいはい邪魔者は消えますよ〜」
そう言って皆を促して出て行ったのはバッツだったかセシルだったか。
残された準備室は静かで、見つめ合う二人は、この時まで穏やかだった。
「…ってこんなことをしている場合じゃない!」
スコールはクラウドを解き放ち雑誌を見た。
「これいつ発売なんだ?」
「いつだったかな…」
「どのぐらいの部数を?」
「どのぐらいだったかな…」
「規模は?」
「さぁ…」
はぐらかすクラウドに、スコールはされど怒れない。仕舞いには、
「そんなことどうでもいいだろ?」
と言われてしまう始末。
どうでもいい?そんなわけないだろ!
「あんたな!自分がどれだけの人間かまだわかってないのか!」
「そんなもの、あんた一人がわかってくれていればいい。違うのか?」
「違っ……」
…わなくもない。が、何かしっくりこない。
「怒ってるのか?」
小首を傾げて少し見上げてくるクラウドに、ため息が出そうになった。
「怒るわけないだろ」
それを聞いたクラウドは安心したように、微笑んだ。
怒れるはずがない。しかもお礼すら告げていなかったことに気づいた。
「ありがとう」
クラウドは、微笑みを深くして、
「こちらこそ、いつもありがとう」
そう囁いた。
愛しい恋人を、雑誌発売後起こりうるであろう災難から守るためにできることは何か、考えるよりも先にスコールはクラウドを連れ出した。

クラウドを連れて、相談しようとラグナを訪れたけれど、もしかすると雑誌は発売されないかもしれない。
それならそれでいいかもしれない。
雑誌が発売されなかったらクラウドは悲しむだろうか。
けれど、あそこまでやる気に満ち溢れた父親を初めて見たスコールには、ラグナを止める術がなかった。







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