大統領殺人事件4

現実とは残酷なもので、あの幸せな時間は夢ではなかったかと思うほどだ。昨夜は突然現れたクラウドをここで抱いた…ような気がする。気がする、と曖昧なことしか言えないのは当のクラウドがいないからだ。あれはスコールの願望が見せた夢だったのか。スコールはため息をついてベッドから出た。
「…ん?」
ゴミ箱の中に見慣れない白い布。それを拾い上げ、あれは願望ではなかったのだと確信する。
スコールは着替えると包帯をジャケットの内ポケットにしまった。これが公になってはならないし、何よりクラウドが身に付けていたものだ。こんな逃亡劇は長く続かない。だが二人ならどこにでも行ける。
「あ、スコール」
「フリオニール…」
マンションを出るとフリオニールがこちらに向かって歩いてきた。これから大学に行くのだと言う彼は上機嫌で鼻歌を歌っていた。人の気も知らないで、と思ったがこんなことは言えるものではない。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「ああ…」
だがフリオニールはすぐにスコールの様子に気付いたようで心配そうに顔を覗き込んできた。とはいえ理由を言えるはずもなく。
「大丈夫、だ…?」
ふわりと香る甘い匂い。どこかで嗅いだことのある香りだ。甘くて頭の奥がちりちりと痺れるようなこの匂いは…
「クラウド」
「えっ…」
不自然なほどフリオニールか跳び跳ねる。スコールは目の前の男を見た。急にそわそわと視線をさ迷わせ落ち着かない。こいつはきっと何か知っている。
「どこだ」
「……」
「どこにいる。お前の家か」
「違うっ。俺の家にはいない」
「お前の家には、ということは知っているのか」
「!」
しまった、とフリオニールは手で口を覆った。そして一歩後退るとくるりと後ろを向いて走り出した。
「あ、おいっ、待てっ」
だが足の速さで遅れを取るほど運動不足でもない。フリオニールの背中を掴むと力一杯引き寄せる。そのまま地面に転がして腹の上に足を乗せた。
「お前と追いかけっこをして遊んでいられるほど暇じゃない。…分かるな?」
ごくりとフリオニールが唾を飲む。暫くその状態か続いたがようやく諦めたように話し出した。
「俺が言ったって誰にも言わないで欲しい」
「約束しよう」
「クラウドは…俺の家にはいない」
「…」
「今はいない。本当だ」
何なら家の中を探してもいいと言うのを見ると本当だろう。フリオニールも真剣にクラウドのことを考えるならここでスコールに嘘はつかないだろう。
「どこへ行った」
「分からない。当てはあるみたいだったけど」
「セフィロスか」
「違うんじゃないかな。多分、ティーダとバッツのところも違うと思う」
なぜそう言い切れるのか。だがフリオニールは後は勘弁してくれと言うだけで口を閉ざしてしまった。
フリオニールを解放し、スコールは大学とは反対方向に歩き始めた。むやみに探し回っても見つけられない。キロスなら何か情報を掴んでいるかもしれない。そう考えて自宅に向かった。




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