新しいパンツ

パンツをカゴに入れながらバッツはため息をついた。何で自分の分ではない、男物のパンツを買わねばならないのか。だがそれがクラウドのだと思うとそんなに悪い気はしない。
日付が変わる少し前、突然クラウドが飛び込んできた。しかも裸エプロンという姿で。人に見つかろうものなら大変な騒ぎになるところだが、幸い誰にも会わなかったらしい。
胸元の鬱血痕や太ももにこびりついた精液が生々しく、慌てて風呂場に押し込んだ。着替えを準備していて未使用のパンツがないことに気付いてコンビニまで買いに来たのだが。
「まさか無理矢理って訳じゃないだろうし…」
スコールに贈った絹の靴下は早速使用されたようだった。エプロンを拒否しなかったのだから今更靴下くらいで無理強いすることはないだろう。だが深夜に切羽詰まった顔で訪れたクラウドは明らかにスコールから逃げてきた。何があったのか聞いておいた方がいいかもしれないと思いながらバッツはスコールに電話をかけた。
「おう、こんな時間にわりぃな。ちょっと聞きたいんだけど…」
スコールと話しながら酒コーナーの前で足が止まる。バッツとしては面白い展開なのだがクラウドは素面では言いにくい話だ。少しアルコールを入れた方がいいかもしれない。
「でもクラウド酒強いしなー」
おもむろにウォッカの瓶を掴んでカゴに入れる。幸いバッツの家族は旅行に出掛けていてしばらく帰ってこない。明日は遅くまで寝ていても咎める者はいない。多少二日酔いになっても大丈夫だろう。
会計を済ませ家に帰るとクラウドがリビングで膝を抱えていた。バッツが用意したシャツを着ていたが下は当然何も履いていなかった。裾から見え隠れしている足の付け根が悩ましい。バッツにとってはクラウドは友人だ。それ以上の感情がないから何も感じないが、大抵の人間はやられてしまうかもしれない。
「ただいまー。パンツ買ってきたぞ」
「すまない」
クラウドがパンツを履いている間に氷と水を用意する。しっかりとハーフパンツまで履いてきたクラウドがテーブルに着くとグラスを差し出した。
「こんなこと言いたくないけどさ、外歩く時の格好は考えた方がいいぜ」
「ああ…」
「あんな格好でうろついて、痴漢に襲われたらどうするんだよ」
そう、普通男があんな格好で歩いていたら変態扱いで現行犯逮捕だが、クラウドはレイプの被害者にしか見えない。警察や良識ある人に保護されればまだいいが、中には更に手酷いことをする者もいるから危険だ。当のクラウドがそれを理解しているかといえば、多分していないだろう。
はあーっと盛大にため息をつけば、呆れられたかとクラウドが身を小さくした。確かに呆れている。いつになったら自分の容姿を理解するんだろう。
「まあいいや。ウチ、しばらく誰も帰ってこないから明日は遅くてもいいぜ」
そう言いながら酒を勧めると、クラウドはこちらを窺いながらグラスに口をつけた。ちびちびと飲んでいたが、だんだん気が抜けてきたのだろう。グラスはすぐに空になり、目もとろんとしてきた。
「スコールに無理強いでもされたのか?」
それなら原因を作った自分にも非があると言えばクラウドは首を振った。スコールから話は聞いていたから知ってはいるが、敢えてもう一度問う。
「してる最中を…スコールのお父さんに見られて…」
思い出したのだろう。そこまで言うとクラウドは項垂れてしまった。こうなることは分かっていたが、耐えるように俯くクラウドに何と声をかけたらいいか分からずバッツも無言のまま頭を抱えた。




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