温泉へ行こう3冬の花火

「なんでこんなところにこんなものが…」
ここは冬山だ。
こんなものは不似合いすぎる。
「スコール、これを見てくれ」
けれど目についたそれを、そのままにしておかなかったのは、小さな書き置きと興味から。
クラウドは、それを手にスコールを探した。
「スコール」
「どうした?」
探していたスコールは別荘の二階、寝室にいた。
「何してるんだ?」
「いや、完璧なベッドメイクだと思って…ほら十円が跳ね返るだろ」
ズボンのポケットから出した十円がスコールの手からベッドへと落ちて跳ね返った。
「…すごい」
「…このベッドメイク…」
スコールが眉間にシワを寄せて、顎に手をやった。それは何かを考える仕草だった。
「…じゃなくて、どうしたんだ?」
けれど彼は頭を振りクラウドに向き直った。
「あ、こんなの見つけた」
「花火…?」
「あぁ」
「クジャのか?時期外れにもほどがあるだろ。湿気てるんじゃないのか?」
花火の袋を眺めるスコールに、クラウドはメモを差し出した。
「……はぁ」
スコールはうなだれた。
メモの字は良く知る人物のもの。
「何やってんだあの男は!」
親父と叫ばないところがスコールである。
「ラグナからの好意なら、湿気てないだろ」
クラウドは嬉しそうに花火を見た。
「やっぱりうちのやつらも噛んでたな…このベッドメイクはたまの仕事だろう」
ベッドにばふんと勢いよく座り込み、スコールはシーツを撫でた。
「さすがだなスコールぼっちゃま」
「ぼっちゃまはやめろ!」
あはははと寝室に笑い声が響いた。
「で、やるのか?」
「もちろんだ」
二人はキッチンからライターを持ち出し、外へ出た。
冷たい空気が肌を刺す。
慌ててコートを着に戻り、再び雪の地を踏んだ。
ギルガメッシュが夕飯を作りに来て、作り終えて帰って、それを食べて一息ついて、家捜しをしていたら辺りはもう暗くなっていた。空には普段街では見られないような数えきれないほどの星が燦燦と輝き、夜空を賑わせていた。
「圧巻だな」
「すごいな」
あまりの光景に言葉がでなかった。
腕時計は、もうすぐ日付が変わろうとしている。もうあと数十分後には新しい年がやってくる。
その瞬間を、空の星と地上の星とで迎える。
最高だと思った。
手持ち花火をひとつ、袋から取り出したのはクラウド。
それにライターでスコールが火を付けた。
チリチリチリジュワッ
途端に舞い散る光りのシャワー。
「綺麗だな」
スコールが思わず呟いた。
「雪に反射して、キラキラしてる」
クラウドの瞳もキラキラと輝いている。
花火の光りを受ける雪。熱に溶け水になっても、輝きは消えなかった。
「こんな年明け、初めてだ」
「俺もだ」
消えて燃えた花火を雪に刺す。ジュッと短い音を立てて、それすらも好きだと思うほど、今が幸せだ。
もうあと少し。
二人は目を合わせ、微笑みながら言った。
「明けまして、おめでとう」
いくつもの花火をして、笑って、感動して。
きっと今年は昨年よりいい年になるだろう。








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