それが友達

うーん…
待ち合わせに選んだのは確かに俺だけど、これはさすがの俺でも居づらい場所だ。
猫に似たハローなんちゃらってぬいぐるみやうさぎっぽいなんちゃらメロディーに囲まれて、俺は内心どうか通報されませんようにと祈っていた。
あぁ、客の視線が痛い。
いよいよその店から出ようとした時、やっと待ち人が来てくれたことに感謝した。
「バッツ!」
「ティナ、元気そうだな」
ふふと笑う彼女は、やっぱり可愛い。
「待たせてごめんなさい」
「平気だって」
もちろんティナの笑顔を見れば待つことも痛い視線もなんのその。
以前彼女の逃避行を手助けした時に連絡先を交換しておいた自分に万歳だ。
結局あの後スコールがどう対処したのか知らないが、スコールにもクラウドにも何の変化もないことから、上手くやってくれたんだろう。過去のことを掘り出すのは好きじゃない。その事実だけで十分なのだ。
忘れていたわけではないが、ティナから連絡を貰ったこと自体がびっくりしたぐらいだ。
そして、これは、デート…ではない。
「ごめんなさい、こんなこと頼めるのバッツしかいなくて」
迷惑よね、とティナは俯きしゅんとする。
その仕種にやられない男子なんていないだろうな。
俺も思わず頭を撫でてしまったぐらいだ。
「ちっとも迷惑じゃないって!むしろ嬉しいからさ!」
笑顔になって欲しくて、俺はニカって笑ってみせた。それにつられて笑ってくれたティナ。素直な女の子って魅力的だな。
「俺の友達も紹介する!だから寂しくないぜ?」
「嬉しい。私今日が楽しみで眠れなかったぐらいなの」
「んじゃ、行くか」
「ええ」
俺の隣を並んで歩くティナ。
向かう先は、大学だ。
詳しいことは忘れたけれど、うちの大学に編入するらしい。年齢的にはジタンの一つ上か?女の子に年齢って聞きにくいけど、確かそんな感じで。だけど、彼女の編入はごくわずかな人間にしか知らされないようだ。理事長とか関わる教授陣とか俺とか。多分これがスコールたちの対処方法なんだろうけど。いきなり誰も知らない大学に放り込まれるのは女の子だったら寂しいに違いない。ばら色の大学生活を送るには友人は必要不可欠だ。彼女の存在が公になるのはまずいけれど、俺の友達なら絶対大丈夫って自信があるから。
横を歩くティナの顔は笑顔で溢れている。それがずっと続くように俺は手伝う。うん、いい仕事じゃね?



「ってことで、ティナだ。この秋から編入してくるけど極秘で一つ頼むぜ」
「ティナです、よろしくお願いします」
ぽかーん。
ティーダに至っては口が塞がらないようだ。
クラウドの準備室の中にこれほど人間がいたことがあったであろうか。今準備室の中には、クラウド、スコール、ティーダ、ウォーリア、セシル、フリオニール、ちょうど遊びに来ていたルーネス、そしてバッツとティナの九人がいた。ルーネス以外はバッツの呼び出しで準備室集合と声をかけられていた。もちろんパイプ椅子の数はたりなくて、フリオニールが座っていた椅子をティナに譲り、椅子に座っているのはクラウドとティナ、それからウォーリアだけだった。
「もうそんな時期か」
最初に話したのはスコール。
「そうだったな」
同意したクラウドは、あれから色々あって忘れていたという感じだった。
渋い顔をしているのはウォーリアだった。
「極秘という理由はわかったが…」
「ウォーリア、そこはティナちゃんの為に目をつむろうよ」
何か言いたげなウォーリアの肩を隣にいたセシルが叩く。きっとセシルのことだ、ゴルベーザから話を聞いていたに違いない。仲の良い、いや良すぎる兄弟だなぁとバッツは思う。
「俺は大歓迎っス!ってか久しぶりっスよね!俺わかる?」
「うん、ティーダくん」
「くんとかいらないって!」
「編入ってことは何年?僕と一緒だったらすごく嬉しいんだけど!」
はしゃぐティーダとルーネス。ルーネスは同学年だとわかるとさらにはしゃぎだした。あの履修がとか学食がとか会話に花が咲き乱れる。二人の波長は合うようだ。
「びっくりしたけど、うん、いいんじゃないか?」
フリオニールがまとめるように言えば、全員が頷いた。
「みなさんにお願いがあるの。どうか私をみなさんのお友達にしてください」
ぺこりと頭を下げたティナに、バッツが言う。
「何言ってるんだよ、もう友達だって。な?」
「うん!」
ルーネスが頷く。
「どっかでおやつ買ってパーティーするっスよ」
ティーダは騒ぐ気満々だ。
「極秘にパーティーってなんだか不思議だね」
「会場はここしかないな」
セシルとウォーリアも結構ノリ気で、
「昨日作ったケーキがあるぞ」
フリオニールが準備室の冷蔵庫を開ける。
「飲み物は………茶だな」
スコールが同じく冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出して紙コップに注いでいく。
「よろしく、ティナ」
クラウドが握手を求めれば、ティナは照れたように少し赤くなりながらよろしくと手を握り返した。
「よっしゃ!んじゃ乾杯!」
楽しいこと大好き。
それを一緒に感じる人数は多ければ多いほどいいに決まってる。
バッツは友達が大好きだ。そしてきっと、全員が同じ思いでいるはずだ。


「賑やかだねぇ」
「うちの馬鹿息子の声つつ抜けじゃねぇか」
「……くだらん」
クジャが苦笑いを零す。
「そんな顔には見えないよ?」
「…」
「ま、俺たちはあいつらを守ってやろうぜ?」
ニヤニヤと笑うジェクトにため息を零してセフィロスは珈琲を口につけた。
「なんなら俺らも今日飲みにでも行くか?」
「「……」」
ジェクトの提案に少しの間。
そして、
「暑苦しいのはごめんだよ」
「一人で行け」
クジャは部屋から出て行き、セフィロスは書類に目を通す。
「けっ…」
ジェクトはソファでふて腐れた。




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