焼き芋に纏わるエトセトラ5

「楽しかっただろ?」
「それは二の次だ。俺がどんな気持ちでいたと思って…」
「悪かったって!今ではちゃんと反省してるってば!」
顔の前で両手を合わせて頭をさげるバッツにクラウドはため息を吐いてやった。
仕方ないとクラウドはバッツを許してやることにする。バッツが何をしても、結局はこのパターンで終結するのだ。
バッツに強気で対応しようと思うのに、なぜかバッツを憎めないのだ。それこそスコールのように幼なじみだったら報復することもできるのかもしれないけれど、バッツのおかげで自分は…クラウドはそう思わずにはいられないのだ。
「…今度やったらあんたも同じ目に合わせてやるからな」
「……俺の女装見たいか?」
「……」
「……」
「………」
「………」
「…………ククっ」
「ぷっ…アハハハ」
しばし見つめ合ったあと、二人は同時に吹き出した。
「見たくない…こともない」
「マジで!?」
ニヤリとクラウドは笑う。
「笑い話にもなるし、何かの切り札にもなるかも」
「……弱みを握ってお前は俺をどうしたいわけ…?」
バッツがたじろぐ。けれどクラウドはそれを気にもとめずにただ笑みを深めた。
「さぁな…」
「…怖っ!」
そんなやり取りができる関係が心地いい。
「でもさ、スコールに言っといてくれよ」
「何を?」
「木の上は反則だって!落ちたらやばいし!」
幼なじみのスコールは勿論知っている。仲間にも先日の学祭でバッツが高所恐怖症だというのを知られてしまった。隠していたわけではないが、知っていて欲しいものでもない。
けれど、クラウドはまだそれを知らない。あんな報復をしてくるような男になってしまったけれど、スコールは弱みを言い触らす男ではない。そもそも報復自体が意外すぎてバッツは何の抵抗もできないままされるがままだった。
「あぁ、ティナ達から聞いた。あんた木の上にいたんだって?」
「好きでいたんじゃないっつーの」
ふぅんとクラウドは相槌を打って、
「自分で下りてくればよかったのに」
無下にもクラウドはそう言った。
できたらそうしてるよ!
言いたいがここは我慢だ。クラウドに悪気はないのはわかっている。
「あ、まぁ…あんときはちょっと体調悪くて…」
「その前はピンピンしてたくせに」
ちろりと目線だけ寄越すクラウドの顔からバッツは目を逸らした。
「まぁいい。スコールには俺からも言っておく。ところでバッツ」
「何だよ」
「あんた、楽しいこと好きだろ?」
先程の目線だけ寄越してきたクラウドではなく、柔らかくけれど絶対凛とした笑みでもってバッツを見つめるクラウドがいた。
「好…き、だ…けど?」
俺は今何が好きだと言ったんだろう。楽しいこと?クラウドのこと?どっちも好きに決まってるだろ。
そうこうしてるうちにクラウドはゆっくり瞬きをして、口許を綻ばせた。
「うん、好きだよな…なぁ、」
知らず喉がなる。
クラウドの顔が少しずつ近づいてきた。
こんな綺麗な顔とキスとかしてるスコールが羨ましくなるほどに、クラウドの顔はすぐそこだ。
「クラウド…?」
「掘ってくれないか?」
「ほ…?!」
掘る?!
まさかクラウドからそんなお願いが?!
願ったり叶ったりの状況は間違いなしだが、バッツは友を裏切らない。ジレンマがバッツを襲った。
「クラウド!それは…」
「堀り出し方は菜園にいるフリオニールに聞け」
呆気にとられるバッツにクラウドは尚も続ける。
「それから実行委員の二人には他にやってもらいたいことがあるから、テキパキ動け」
バッツはクラウドの手に鞭が握られているような錯覚を覚えた。
「動けって…何の話?」
「ちょっとしたパーティーの話」
「パーティー?」
そんな催し物あっただろうかと頭の中のスケジュールを確認するも思い当たらない。
「何のパーティーだ?」
「それはフリオニールのところへ行けばわかる」
バッツがわかったことは、自分はこれからフリオニールの元に行かなくてはいけないということだった。
「二人で役割を決めて、そこからまた皆に分担させていってくれ」
「あ、あぁ…なんかよくわかんねぇけどフリオニールんとこに行ってくるよ」
バッツはクラウドの元から駆け出した。
フリオニールと学食でご飯を食べてから少し時間が経過した。クラウドは小腹を満たすべく、カフェテラスへと向かうことにした。





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