焼き芋に纏わるエトセトラ3

「ねぇ、この本読んだ?」
「えぇ。寝る前に読んでるとお腹がすいてきちゃうのよ」
本棚の前でクスクスと笑うティナとルーネス。
クロワッサンがすごく美味しそうで、食べたくなっちゃうのとティナは本の表紙を撫でた。
「真夜中に開店してるパン屋さんとか楽しそうだよね」
「行ってみたいわ、そんなパン屋さん」
「あ、今度ドラマ化するみたいだよ」
「私もうチェックしてあるのよ」
二人はまたクスクスと笑い合った。
そんなやり取りを見守る青年が一人。
「…二人とも可愛いなぁ」
そんな呟きは小さくて、誰にも聞こえなかった。
クラウドは目の前で次々と本について語り合う二人に、心底癒されていた。
こんな穏やかな時間がずっと続けばいい。そう思わずにはいられない時間だった。
そうこうしているうちに、ルーネスが振り返り、存在がばれた。
「クラウド!いつからいたの?」
クラウドを見つけた二人は嬉しそうに笑った。
「少し前かな。俺はあっちで医学書読んでたから」
「医学書?クラウドお医者さんになるの?」
ティナがきょとんと目を丸くした。
「ならないよって俺なんかがなれないよ。ちょっと調べてみたいことがあったから」
クラウドはティナの頭を撫でた。
ふわりと柔らかい髪の感触にクラウドは目を細めた。
「ティナとルーネスは何をしていたんだ?」
後ろから見ていたから知っているけれど、敢えて二人に聞いてみたかった。
「面白い本探しをしていたんだ」
「でもね、ルーネスったらここにある新刊はほとんど読んでて、いつの間にか読んだことがない本探しになっていたの」
ふふふとティナが笑った。
「それはティナもでしょ。ティナの方が読んだ本多いんじゃない?僕はまだこれ読んでないし」
そう言うルーネスの手には一冊の本があった。
「…面白そうなタイトルだな」
クラウドはルーネスから手渡されたそれを見て、パラパラとめくり、美味そうとか食べたいとか呟いた。
そんなクラウドを見ていたティナとルーネスは顔を見合わせてまたクスクス笑った。
「クラウドお腹減ってきちゃうよ?」
「それオススメよ。でも寝る前には読まない方がいいわ」
クスクス笑う二人に、クラウドもくすりと笑った。
「了解した」
クラウドはその本を手に、レジへと向かった。

本屋を後にした三人は、風の冷たさに身体を丸めた。
「寒くなってきたね」
「もうそんな時期なのね」
二人の一歩後ろを歩くクラウドは、前の二人の可愛いやりとりにまた癒されていた。
あぁ、俺、癒しが足りなかったんだな。
ふと先日の学祭のことを思い出す。途端にブワっと寒気が襲った。あんな格好二度としない。でも…あんなスコールはまた見てみたいかも。スコールって綺麗だったんだなぁ。格好いいだけじゃなかったんだ。
スコールの格好を思い出し、そして思い出さなくていいことまで思い出したクラウドは顔を赤くした。
フリオニールの元から逃走したあの後、スコールにスイッチが入り致してしまったことは、まぁ自分へのご褒美にもなったわけだけど。勿論、次の日が学祭の振替休日でよかったと思うほど体力を消耗したけれど。
終わった今となってはいい思い出と処理していくしか方法は残されていない。
「……」
なんだかんだで楽しかった。それでいい。
「あ!カボチャもいいんじゃない?」
「じゃがいもも!」
気づけばティナとルーネスは野菜の名前をあげてクスクスと笑っている。
「何の話だ?」
クラウドが交われば、二人はより嬉しそうにした。
「一緒に焼くと美味しいかなぁって」
「大人数でしょ?たくさんあった方が楽しいと思うの」
そう言う二人の手には携帯電話が握られていた。
クラウドも携帯をチェックすれば二人の言う意味が理解できた。
さすがはフリオニール、仕事が早い。
「参加できるか?」
クラウドからのその問いに、二人はもちろん!と笑顔で頷いた。
「ねぇクラウドも何かお野菜考えて?」
「美味しい旬の野菜だよ?」
二人に言われて、クラウドは頭を捻った。
「………栗?」
その答えに二人はいいねとまた笑う。
笑いが堪えない二人に、クラウドは本当に癒された。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -