何故1〜助けてください〜

「なんだこれは…」
クラウドはそうとしか言葉がでてこなかった。
目の前に広がる光景があまりにも眩しくて、眩暈がしそうだ。
いや、いっそ眩暈を起こしてぶっ倒れたい。そう思わずにはいられなかった。
隣に立つスコールを盗み見すれば、意識が遠退きかけていた。
あのスコールが口を半開きにしている。
かく言うクラウドも半開きだが。
二人の目の前には、明るい笑顔を振り撒く男と、暗いお通夜のような顔をしている男がいた。
「ささっ!どれにする?どれでもいいぜ?あ、ちなみに俺のオススメはこれ!」
ビラッとバッツが広げて見せたそれは、できれば見たくはないもの。本来の用途で使われるならば見たい。
しかし、絶対違う。
本来の用途では使われず、嫌な予感しかしない。
「んで、フリオニールのオススメがこれ」
「ヒィィィ」
バッツがフリオニールの名前を出した途端、うずくまっていたフリオニールは青い顔になり、スコールとは違う意味で意識を飛ばしかけていた。
「早く決めて準備しないと間に合わないぜ?他の参加者は準備できてもうステージ裏にいるはずだ」
お前らには俺らが丹精こめて作ったからさ、と手渡されたもの。
手が震える。
スコールのセリフを借りるならこうだ。
何故こうなった。
今日は楽しい学祭の2日目だ。
休憩時間にちょっと来いとバッツに促されて、クラウドはスコールと二人バッツに言われるがまま歩き、たどり着いた先には絶望が待ち受けていた。
楽しい学祭のはずだ。
それが何故。
絶望を送られなければいけないのか。
「バッツ…」
絞り出した声に、呆れと嫌味を乗せた。
「何かしたいっつったのはクラウドだろ」
「そうだが、俺たちはあっちを…」
「それはそれ。俺はちゃんと言ったぜ?お前らができることがあったら手伝うって言ったときに、お前らに企画参加してもらうって」
開き直ったバッツの態度。
そう言われて思い起こせばそんなことを言われたような気がする。
しかし、だかしかし。
「こんな企画だとは聞いてない!」
意識を戻したスコールが怒号を立てる。
それにバッツは耳を塞ぎ、フリオニールは今にも泡を噴きそうだ。
「言ったらやらねぇじゃん」
「当たり前だ!お前らクラウドを見せ物にしたいのか?おいフリオニール!」
「ヒィィィ」
「スコール、落ち着け」クラウドの声にスコールは口を閉じ、変わりに二人を睨みつけた。
「クラウドを出したら優勝は間違いないからさ、クラウドは参加じゃなくて優勝者へのプレゼントになってもらう」
「「「は?」」」
バッツの言葉に他三人は意味がわからないと声を上げた。
「あくまで学祭だ、院祭じゃない。だから参加者は四年までの学生。そういう意味ではクラウドは当てはまらない」
「だったら俺は…」
「出ない、とかはダメだって。クラウドが出れるように推薦枠を作った意味ねぇじゃん!結構な票が集まったし、クラウドは優勝はできないけどプレゼントになってもらいたい」
誰だ票を入れた奴。
クラウドは知りたいが、知りたくなかった。
「プレゼントってどういうことだ」
眉間にシワを刻んだままスコールは聞いた。不機嫌さを全面に押し出して。
「優勝者にキスとかどうだ?」
「今決めるのか?!」
「ずっと考えてたんだけどさなんか思いつかなくて」
バッツが頬をポリポリと掻いて、スコールがくだらんと言い、クラウドの手をとり踵を返したその時、
「そういうことなら!」
バンと勢い良くドアが開いた。
「良い提案があるよ!」
「クジャ!」
クラウドたちの目の前にクジャが現れ、今までの話は聞いていたよと宣う。
「なんだよ、いい提案って」
「ゴクッ」
「「…」」
帰りたい。
「優勝者にはクラウドといく雪山温泉二泊三日をプレゼントしよう!」
「は?あんた何言って…」
「雪山温泉だと?!」
「スコール何反応してるんだ!」
「それいいな!でもそんな予算ねぇんだよな…」
「よくないだろ!」
「雪山温泉…」
「フリオニール!顔赤くしてる場合か?!」
「大丈夫!僕の別荘だよ。クラウドに貸すのは大歓迎だし、何より面白そうじゃないか。キス+雪山温泉旅行にしようよ」
「キスはいらないだろ!」
クラウドは全力で否定を繰り返すが、バッツもフリオニールもクジャも、もう止まる気配がない。
「スコール…」
頼みの綱のスコールを見れば、さらに眉間にシワを寄せていた。
「おい」
「なんだよスコール」
「優勝したらキスに雪山温泉旅行なんだな?」
「そうすれば盛り上がること間違いなし!」
「…クラウド」
「…なんだ」
クラウドはもう嫌な予感しかしなかった。
「大丈夫だ、俺が優勝する」
何故そうなった。
クラウドは気絶したかった。









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