和解

がらんとした教室を見回して考える。この空間で何ができるだろう。だが経験の乏しい人生を振り返ってみても何も浮かんではこなかった。
「さて…どうしようか」
「何が?」
後ろからひょこりと顔を出したのはティーダだった。クラウドと同じように教室を見回してから首を傾げた。その様子が無邪気で思わず笑みが零れた。
「学祭。何かしたいと思ってこの教室を借りたんだが、何をしたらいいかと思って」
それなら、とティーダは元気に手を挙げた。
「はいはーい、お化け屋敷にするっス」
「お化け屋敷?」
「うん。めちゃくちゃ怖いやつ」
ぐふふと笑うティーダに少し身構えながら考える。人前に出るのはあまり好きではない。確かにお化け屋敷なら全体的に暗いし、お化けの変装をするならシーツでも被ればいいから誰だか分からない。それに…人を驚かせるのも楽しそうだ。
「そうだな、お化け屋敷にしようか」
「けってーい」
「…おい」
両手を挙げて喜ぶティーダの後ろに重い気配を感じて振り向くとスコールがじっとりと睨んでいた。あんたも一緒にやろうかと誘おうとしてはたと気付く。そういえばスコールは…
「お化けとか怖いの苦手なんだっけ?」
「…」
そんな情けない問いに答えられるはずもなく、スコールはただ黙って二人を睨んでいた。クラウドは内心失敗したかと思ったが、ティーダは全く気にしていなかった。
「お化けが怖くて参加できないなんて可哀想っスね。先生、あっちで打ち合わせするっスよ。そうだ、セフィロス教授にも手伝って貰おう」
「え、あ…ティーダ?」
「企画を部外者に教える訳にはいかないっス。スコールは向こうに行った」
ほら、とスコールを押し出してドアを閉める。あまりの強引な押し出しに戸惑っているとこちらを向いたティーダがにんまりと笑った。
「先生、そろそろセフィロス教授と仲直りしないとダメっスよ」
「別に喧嘩してる訳じゃ…」
あんなことがあったから少し気まずいだけだ。だが避けているのは事実だ。いつまでもこんな状態ではいけないと思いながらも、面と向かって否定の言葉を投げられるのが怖くてうやむやにしている。
「これを機に仲直りして、悩み事は一気に解消っス」
「ティーダ…」
あの騒動に巻き込まれながらもクラウドの気持ちを一番に考えてくれるティーダに目頭が熱くなる。本当に良い子だ。
「それにセフィロス教授が一緒だって言えばスコールも絶対に参加するし」
その言葉に今までのセフィロスとスコールの争いを思い出す。元はと言えば自分のせいなのだが、スコールにはとばっちりのような目にも遭わされた。…それも嫌ではなかったけれど。
「あんまり激しい喧嘩をされるのはごめんだな」
「そうっスねー。でも大丈夫。忙しいセフィロス教授に準備から手伝わせるなんてことはしないから」
それなら喧嘩にならないだろう。早くセフィロスのところにお願いに行こうと言うティーダの機転に感心しつつドアを開けるとスコールが立っていた。
「あれ?まだいたんスか?」
ティーダは意地悪くニヤリと笑ってクラウドを後ろに隠した。それがまたスコールの独占欲を刺激する。
「俺達これからセフィロス教授の所に行くんスよ」
ねー、と首を傾げてクラウドに同意を求めるティーダはどこまでが天然でどこからが計算か分からない。こくりと頷けばスコールの目付きが変わった。
「おい」
「何スか?」
「クラウド…本当にセフィロスのところに行くのか」
「…うん」
せっかくティーダが背中を押してくれているのだ、今行かないとまたずるずると先伸ばしにしてしまう。そんなクラウドの決意を察したのかスコールはこれ以上何も言わなかった。ただ黙って二人の後を着いてきた。
並んでセフィロスの研究室の前に立つ。クラウドが心の準備をしているとティーダがおもむろにノックした。
「ティーダ、もう少し待っ…」
「そんなこと言ってたら日が暮れるっス」
慌てるクラウドをよそにティーダはドアを開けるとクラウドを中に押し込んだ。そしてドアを閉める。突然の出来事にクラウドもスコールもぽかんとドアを見ていた。




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