君の笑顔が見たいから

普段から人が集まる準備室だが今日は部屋に入りきらない程の人が集まっていた。いつもは出しっぱなしの本は本棚に納められ、机に積み上がっている資料も片づけられている。テーブルを囲むように並べられた椅子はソファーだったりパイプ椅子だったり。それでも足りなくて大学院から数脚借りてきた。
パン、とクラッカーの音が鳴り紙テープや紙吹雪が舞う。ろうそくを吹き消したクラウドははにかんだ。
「クラウド、誕生日おめでとう」
「おめでとう」
「…ありがとう」
口々に祝いの言葉を述べる友人達にクラウドは感謝した。誕生日をこんなにたくさんの人に祝って貰うのは初めてだ。
そんな中スコールだけが複雑な顔をしていた。本当は二人だけで祝いたかった。だがティーダには独り占めするなと威嚇され、バッツに夜は二人きりにしてやるからと言いくるめられた。クラウドも大勢に祝われるのを嬉しそうにしているし、まあ妥協することにした。
「はい、みんなからのプレゼント」
「あ…ありがとう」
目を潤ませてクラウドは本当に嬉しそうだ。スコール一人ではこんなに喜ばせらるないだろう。それを少し悔しく思いながらクラウドがプレゼントの包みを開けるのを見ていた。
「これは…エプロン?」
バッツが選んだというプレゼントはレースたっぷりの淡いピンクのエプロンだった。料理が苦手なクラウドにもっと精進しろということなのだろうか。それにしてもやけに少女趣味なデザインだ。どこで買ったのと考えているとティーダが興奮気味に立ち上がった。
「よくこんなの探し出せたっスね」
「ああ、苦労したぜ」
「スコールも夜が楽しみっスね」
スコールはそこでようやくどういう時に使うのかを理解した。そういう意図ならば確かに実用性を無視したデザインでも構わない。
「く、クラ…」
「フリオ!大丈夫か?」
エプロンの用途が分かりフリオニールが鼻血を出しながら倒れる。フリオニールが倒れた理由が分からないクラウドとウォーリアは慌てて抱き起こし介抱するがセシルにその辺に寝かせておけと一蹴されてしまった。
「セシルってたまに黒いよな」
「ああ…」
普段は優しく人当たりの良い友人の意外な一面をここで見ることになりクラウドは震えた。いつもセシルと一緒にいて慣れているはずのウォーリアも今回は頷いた。
「ケーキ食いたいっス」
テーブルの真ん中に置かれた大きなケーキに興奮気味のティーダが早く早くと急かす。作った本人は部屋の隅に寝かされている。クラウドは横目でフリオニールを案じながらも目の前のケーキの誘惑には勝てずフォークを持った。
「主役はチョコが乗ってるやつな」
バッツが器用に人数分に切り分ける。サービスだと少し大きめに切ったケーキが乗った皿を渡されてクラウドは思わず顔が弛んだ。それは本当に嬉しそうで、見る者をも笑顔にした。
ありがとうとクラウドが笑う。こんな笑顔が見られるなら何度でも祝ってやる。そう考えたのはスコールだけではなかった。




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