珍しくやる気を出してみた

授業中でも学生達のどこか浮かれた様子を見ていると何だか心がざわめいた。今までの人生に決して後悔している訳ではない。だが過ぎ去った時間の中に忘れてきてしまった何かが自分を呼んでいる気がして、クラウドはしきりに後ろが気になるのだった。
「それって多分羨ましいんだよ」
「何が?」
「学祭を楽しんでる学生達が」
セシルに言われて納得した。学部生の頃は授業以外はずっとセフィロスの研究室に籠っていた。自分の研究だとかセフィロスの手伝いだとか、バッツに出会うまでは勉強以外のことは何もしてこなかった。
「そうだな、羨ましいな」
「何が羨ましいんだ?」
大学院の研究室の窓からふざけながら楽しそうに歩く学生を見てしみじみと呟くと同時にドアが開いた。ちょうどよく聞こえていたようで、中に入ってきたウォーリアが問う。
「クラウドは学祭に参加したことがないって言うから楽しそうで羨ましいんだって」
「フリオやバッツが実行委員やっててさ、あんな風に仲間と一緒に全力を注いで何かをやったことがなかったから」
「舞台も降板しちゃったしね」
「あれは勘弁してくれ」
セシルに揶揄されて項垂れるクラウドを黙って見ていたウォーリアが口を開く。考えもしなかったその提案に、急に目の前が拓けたような気がした。
「なら、今年何かをしたらどうだ?」
「え…」
背中がざわりとする。まだ、チャンスは残っているのだろうか。
「私も今年の舞台が初めての参加になる。遅いということはないと思うが」
「あ、ああ。だが…」
何をしたらいいか分からない。バッツなら好きなことをすればいいと言うだろうが、今まで勉強ばかりで遊んだことがないクラウドには考えられなかった。
「とにかくバッツかフリオに相談しておいでよ。何かやるにしても実行委員会に申請しないと」
「そうだな」
善は急げだ。クラウドは立ち上がると研究室を出た。うきうきと踊る心を抑えながら実行委員会のある建物に向かった。




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