我が儘ペットの飼い主はご機嫌ナナメ

ティーダが差し出した手紙を見てスコールはうんざりした。このやり取りは何度目だろう。いい加減ティーダにも悪い気がするし、そもそもティーダも安請け合いしすぎだ。スコールは手紙を受け取ると破り捨てたい衝動に駆られながらため息をついた。本当に憂鬱だ。
「すっごく可愛い子だったっスよ」
嬉しそうに差出人を語るティーダはこれっぽっちも迷惑だなんて思っていない。それどころか毎回自分のことのように嬉々として報告してくる。
「で、どうするんスか?」
「悪いが女にうつつを抜かしている暇はない」
「ふぇー、カッコいいっスね」
ティーダが感嘆の声を上げる。やっぱりモテる男は違うっスねえと言いながらも所詮は他人事、その先の事情に興味津々だった。
「そういえばレオンもいい歳なのに彼女いないっスよね」
金持ちで格好良くて優し過ぎるきらいはあるものの性格も良い将来有望な弁護士が未だ独り身なのは何かあるのかと勘繰ってしまう。例えば兄弟で近親相姦だとか。一部の人種に喜ばれそうなことを想像しながら余計なことに首を突っ込む気満々なティーダの目は輝いていた。
「レオンが拾ってきたのの世話が忙しい」
雨に打たれて可哀想だったからという理由で拾ってきたら家があっという間に犬猫で溢れてしまう。スコールは忌々しげに吐き捨てた。スコールなら先のことを考えて心を鬼にして素通りするだろうが、お人好しのレオンには難しかったのだろう。
「前はどこにいたのか知らんがやたらと舌が肥えていて作りたての飯しか食わん。しかも二食と同じものは食わない上に好き嫌いが多い。必要以上に構うとうざがられるし、かといって放っておくと拗ねる」
「あー…大変っスね」
段々と苛々してきたスコールを見てティーダはおもいっきり地雷を踏んだことに気付いた。普段無口な分恨み辛みを語るとスコールは長くなる。
「レオンも一人で面倒看れない癖に簡単に拾ってきやがって。くそっ」
愚痴の対象がレオンにも広がり、相当ストレスが溜まっているようにも見えた。だがそこまでしても放り出したりされない犬か猫が気になった。
「その子、見に行っていいっスか?」
「レオンが事務所に連れて行っているから今はいない」
寂しがり屋だから誰もいない家に置いておけない。そのためにレオンは今まで勤めていた法律事務所を辞め、開業したのだという。ティーダは益々興味が出てきた。
「そんなに美人さんなんスか?」
「美人?まあ、そうだな。見た目が薄幸そうだから、あいつが悪いのにしゅんとされると怒ってるこっちが虐めてるような罪悪感に苛まれることがある」
「すっかりハマってるっスね」
「そうか?」
物事に関心の薄いスコールにそこまでさせる美人なペットをぜひとも見てみたい。
「いつ行ったらいいっスか?」
「日曜日は大抵いるな。人見知りが激しいから出てくるか分からんが」
「何か好物持っていくっスよ」
何が好きかと聞けば長い行列で有名な洋菓子店のシュークリームが挙げられた。ということは並んでまで買い与えているのかと突っ込みたくなる。クールに見えるスコールの意外な一面を見た気がした。

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