それはいつもの夕飯時の些細な出来事。
いつものようにレオンとスコールの向かいにクラウドが座り、スコールが作った鍋をつつき合っていた。
またいつものようにレオンとクラウドの二人は、スコールの鍋は最高だとか言ってスコールを褒め殺しにしていた。
しかし、ふいに何かを思い出したかのようにクラウドが箸を置いて真剣な顔をした。
「クラウド?どうした?」
「なぁレオンはどっちが得意なんだ?」
「……?」
クラウドの質問にレオンは眉を寄せて、クラウドを見つめ返した。
「得意なの、ないのか?」
さらにクラウドまで眉を寄せて、首を傾けた。
「クラウド、たぶん言葉が足りていない」
スコールはため息をつくと、レオンに言った。
「扱う案件は民事か刑事かどっちが得意なんだ?…って聞きたいんだろ」
「そうそれ。さすがスコールだな」
「……」
こんなことを褒められても嬉しくない。スコールは思ったけれど、言わなかった。
「そんなこと聞いてどうするんだ?」
「どうもしない。資料の整理をしてたら、離婚裁判の記録もあれば、窃盗の記録もあるし…普通弁護士って自分が得意なジャンルだけするんだろ?」
だから離婚弁護士って言われる弁護士がいたりするんだろ、とクラウド。
「まぁ…どっちか一つにする弁護士の方が多いだろうな」
「なんでしないんだ?」
「なんでって…民事だろうと刑事だろうと関係ないさ。困っている人がいれば味方になるだけだからな」
きっぱり言い切ったレオンをクラウドとスコールは見つめた。
「な、なんだよ…」
レオンの顔がみるみる赤くなっていく。
こんなレオンは珍しい。
二人はそう思ったけれど、でもそれよりもレオンの言葉に感銘を受けた。
(…法学部も考えてみるか)
スコールは志望する学部に法学部もいれてみようかと思った。
兄と同じ道は…と思った時期もあったが、やっぱり兄は自慢の兄であることは昔から変わらない。
一方クラウド。
レオンの言葉はクラウドの心にずしんときた。
困っている人がいれば助けるだけ。
それが弁護士の基礎中の基礎なのだろう。
しかしクラウドの知る弁護士にはそんな考えを持っている者はいないように思えた。
勝つことに悦を得る者、金のためにやる者、そんなやつらばっかりで、人を助けるという純粋な気持ちを感じたことはない。
そして、自分も。
レオンがかっこよくて、眩しくて、羨ましくて、クラウドはレオンを見れず、俯いた。
そんなクラウドを不思議に思ったレオンが声をかけた。
「クラウド?どうした?」
「…」
「腹でも痛いのか?」
これを聞いたのはスコール。
「え?まだいつもの3分の1も食べてないんだぞ?」
「食べる依然の問題だろ。食べる前から痛かったのかもしれないだろ」
「おいクラウド!大丈夫か?痛み止め持ってくるな」
「お粥の準備してくる」
レオンとスコール、二人同時に席を立った瞬間、笑い声が響いた。
「くくくっ」
「「クラウド?」」
お腹を抑えて、クラウドは頭を振った。
「なんで腹痛で確定されてるんだ?」
まだ笑いは止まらない。
「なんでって…お腹抑えてるじゃないか」
「これは笑いすぎで腹が痛くて」
レオンの問いにクラウドはお腹をさすりながら答える。
「箸も進まないようだし」
「だって笑うの堪えてたから」
スコールにそう言って、あーお腹すいたとクラウドは箸を再び持った。
立ったままの兄弟。
二人同時に首を傾げる。
自分の心情など探られてたまるか。
クラウドは鍋の中を覗きこんだ。
「あ、でもレオンに離婚弁護士は向いてないと思う」
徐にクラウドがそう言ったのは二人が再び席についてからだ。
「なんれら?」
「口に入れながら話すな」
白菜を口にしたまま返すレオンとそれを窘めるスコール。
「だってさ、妻からの依頼でも夫からの依頼でも、どのみち女がレオンに惚れてさらにややこしくなりそうだから。俺が女だったらレオンを放って置かない」
そう言いながらもくもくと鍋の中身がクラウドの体内へと消えていく。
この細い身体のどこに入っていくのか。
「そんなことあるわけないだろ」
クラウドの話を否定して、レオンも食べ続ける。
「……」
しかしスコールは一人眉を寄せた。
それに気づいたクラウド。くすりと笑って、スコールに微笑んだ。
「俺が女だったら、スコールのことも放って置かないよ」
だから拗ねるなよ。
クラウドはスコールの頭を撫でた。
「な…っ!」
次に顔を赤くしたのはスコールだった。
「お前拗ねてるのか?」
「…なわけないだろ」
「おかわり!」
こうしていつも食卓には笑顔が絶えない。
温かい…クラウドは人知れず微笑んだ。

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