hide out3

いくらライトニングの家が安全だと言い含めたとしても怯えるクラウドを一人にしてはおけなかった。先ほどの男が先日刑務所を脱走した殺人犯だというのを取り寄せた資料で知ったライトニングは見覚えがあるのはそのせいかと納得した。
そしてクラウドの経歴に目を通す。あの男にはストーカーの被害に遭っていたようで、接近禁止命令が出ていた。その他は特に補導歴もないようだった。それよりクラウドの年齢に驚いた。まだ未成年だと思っていた。それで家出人捜索届が出ていないのも頷ける。警察が把握しているクラウドの情報はここまでだ。
ライトニングはもう一枚の資料を見た。こちらは独自のルートで調べさせたものだ。
クラウドは幼い頃に家族と死別している。その後遠縁の親戚に引き取られたが疎まれたのだろう。すぐに留学し、帰国したのは最近だ。そしてストーカー事件が起こった。既に遠縁の親戚とは連絡が絶えており、周りに頼る者がない中で随分と怖い思いをしたようだ。
成人しているとはいえ身寄りもないあの頼りないクラウドを放り出すわけにはいかない。
クラウドを見ると目が合った。憔悴しきっている顔がにこりと無理に笑顔を作る。それを見て思わず抱き締めた。
「ライトニング…」
「大丈夫だ。お前は私が守ってやる」
「え、あ…」
おずおずとクラウドの手がライトニングの服の裾を掴む。ありがとうと遠慮がちに紡がれた言葉は安堵を含んでいた。
それから数日はまるで密室にいるように過ごした。この家が安全だということはクラウドも知っている。だが頭で分かっていても恐怖を打ち消すことはできない。クラウドの気持ちが追い付くまでは側にいるつもりだった。
「ライトニング」
にこりと笑うクラウドは大分落ち着いたように見えた。
「もう大丈夫。だから帰るよ」
待つ者もなく一体どこに帰るのか。聞いてもクラウドはただ笑っているだけだった。
「ありがとう」
「私は何があってもお前を守る。いつでも来い」
出会ってまだ数日なのに何をこんなに入れ込んでいるのだろう。クラウドを異性として見ている訳ではない。ただ守ってやりたい、笑っている顔が見たいと思っただけだ。
クラウドはもう一度ありがとうとライトニングを抱き締めると笑顔を残して去っていった。





すっかりと氷が溶けたグラスをぐるぐると回す。普通に知り合う訳はないと思っていたが、やはりなかなかハードな出会いをレオンは手を固く握り締めて聞いていた。
「なんというか…ライトニングらしいな」
色んな意味で。
追われていたとはいえクラウドもスピード違反をし高速道路を封鎖させた張本人だ。その責任を独断で不問にするためにどれだけ手を回したのだろう。相手の男が二度とクラウドに近付かないように、本人は和やかに話し合いをしたと言っているがその話し合いにはもちろん銃が出てきたに違いない。
「何でそんなに親身になるんだ」
「その言葉をそのままそっくりお前に返そう」
「…」
多分、とライトニングはグラスを煽った。ティファに新しくオーダーして空になったグラスを眺める。
「何故、などと考えても答えは出ない。クラウドだから、としか言えない。違うか?」
「…そうだな。ライトニング」
「何だ」
「ありがとう」
クラウドと出会ってくれて、助けてくれて。ライトニングの強さはクラウドの心に光を灯したはずだ。人生を諦めなかったからこそ道がレオンと交差した。辛い思いをしてきた分これからは幸せになってくれればいいと願わずにはいられなかった。

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