「さようならー!!」という声と共に、ショートホームルームが終わる。生徒達は、これから各々の部活へ向かうこととなる。まぁ、それは俺も例外じゃなくて。これから、部室に向かうとこなんだけど。

そんなこんなで、俺は教科書を鞄に入れ終え教室から出ていこうとした瞬間――


「…っと、おい!!本好。待てってば、本好!!」


あぁ、やっぱり今日も来た…


「あぁ!本好、なんだオマエ、露骨に嫌そうな顔しやがって!」

「…事実なんだから、しょうがないだろ」

「うっわ、ひどっ!さすがの俺でも傷つくわ」


目の前に現れたのは安田。クラスで、いや学校中で変態ということで有名だ。まぁ、本人は「俺は、そういう面が、ちょっとオープンなだけだ!!」とか言って開き直ってるけど。

 安田のことは、別に好きでも嫌いでもないけど、出来れば俺に話しかけないでほしい。でも、毎日放課後になると、話しかけてくる。理由はというと、


「オマエ、俺ら同じ部活なんだから一緒に行こうって言ったじゃん!!もう、何回も言ってんだから、そろそろマジで習慣付けてくんね?」

ということだ。


「何言ってるの、安田。ちゃんと毎回一緒に行ってるでしょ?」

「それは、俺が呼び止めてるからだろ?オマエ、止めないと一人で行っちゃうじゃん」

「それが、何か問題でも?」

「大問題だよ!!」


いまいち安田が言っていることが理解出来ない。まぁ、理解したいとも思わないんだけどね。
そんな話をしながら、俺は安田と部室へと歩き始めた。

 しばらく無言で歩いていたら、ふと思い浮かんだ疑問。


「そんなに嫌なら、俺じゃなくて他の人と行けばいいんじゃない?」


俺のこの言葉を聞いた安田はというと、少し驚いたような呆れたような顔をした。


「は? 俺が本好以外と?」

「うん」

「いや、無理でしょ。というか、嫌だね。俺、本好じゃねーやつと行くくらいなら一人で行くし」


その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になり、動いていた足が無意識のうちに止まる。数秒、その状態が続いたかと思うと一つの感情が頭の中に浮かんできた。


「おい、本好!何、止まってんだよ。部活、遅れるぜ?」

「…え、あぁ、ごめん……っは、はやく行こう!」

「うぉっ、ちょ、本好!!」


そう言って、俺は安田を無視して走り出した。
今、安田の顔を見てはいけないと思ったから。見たら、何を言ってしまうかわからなかったし。


 さっきの安田の言葉が、嬉しかったとかね。絶対、気付かれたくない。安田のくせに。
まぁでも、次から部活に行くときは、待っててあげてもいいかな、なんて思った。

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