今日は日曜日で、場所は俺の家。ケンジがどうしても来たいって言ったから、先に入っていた他の用事を断ってまで付き合ってやったのに。こいつは来るなり音楽を聞きながら漫画を読みだす始末。完全に自分の世界に入ってやがる。
俺はというと、当然やることもなく。随分前に買ってもう何回も読み返した雑誌をパラパラめくったり、普段は読まずに消去するメルマガを読んだりしていた。

でも、どうしても、それではつまらない。別に好きでもないことをしたって、すぐに飽きてしまう。

ケンジを見てみると、さっきの状態から何一つ変わっていなく、真剣に漫画を読んでいた。さすがに、それには多少イラついた。


「……なぁ、ケンジ」

「…………」


呼んでも一切反応を返さない。きっと音楽のせいで俺の声が届いていないんだろう。
こっちは他の約束を断ってまでお前といるんだから、せめて話ぐらい聞いてくれてもいいだろ。


「ケンジぃ!!」

「っうわ!な、なんだよ藤田」


声が届くように普段出さないような大声で呼ぶと、ケンジは体をビクっと跳ねさせて、やっと俺を見た。目を大きく開いて、焦りと驚きを隠せないようだ。


「…えっ何?藤田、怒ってんの?どうかした?」


本当に何が起こったのか分からないといった顔をして、こっちを見てくる。


「……別に…怒ってないよ」

「は?何?悪ぃ、聞こえないわ」


と、右耳に挿してあったイヤホンを取り外しながら言う。が、未だ左耳にはイヤホンが挿さっているし、手の中の漫画は開いたままだ。
それが、俺をさらに腹立たせた。


「……それ、自分ん家でやればいいんじゃない?」

「そ、れ……?」

「だから、音楽聞くのとか漫画とか」

「あぁ……あっ!!」


俺に指摘されて、最初は浮かない顔をしていたけど、急に何かに気付いたように声を上げニヤッと笑みを見せるケンジ。その笑みは何か企んでいるとき、人の弱味を握っているときなどに出る、それだった。


「藤田、わかった。お前、俺にかまってもらえなくて寂しかったんだろ?」


軽く笑って、だけどその目はしっかりと俺を見て。「図星だろ?」と無言で問いかけているようで。


「ち、違う…!違う違う」


否定の言葉を並べても意味はなかった。「違わないだろ?」と真剣に聞いてくる。何故ケンジにはバレてしまうのだろうか。いつもそうだ。俺の嘘を簡単に見抜いて、最終的には俺が折れることになる。


「…そ、そうだよ、悪いかよ!一人で暇で、それで寂しくて、イライラして!」

「藤田かーわいいっ」

「っわ、ちょっと!」


そんなことを言いながら急に抱きついてくるケンジ。「俺、お前のそういう素直なとこ好きだぜ」なんて言う。


「も、もう…いい加減離れろ」

「えー」

「えー、じゃない!」


そう言い、腕でケンジの肩を押し返すとぶつぶつ言いながらも素直に離れてくれた。

そして挿しっぱなしだったイヤホンを外し、漫画を片付けながら「何する?」と。
なんだか俺はそれだけで充分だった。ケンジの意識があんな無機物ではなく俺に向いてくれて。


「んーそうだな。それじゃぁ――」



相対理論恋模様

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