ジャンに会いたい。馬鹿だな、朝会ったばかりじゃないか。脳内一人芝居がこの上なく空しかった。そうだ、俺は疲れているんだ。余りにもジャンに触れられない日が続いたから、ジャンが足りな過ぎておかしくなっているんだ。
 目蓋が重い。今日に限って何時まで経っても仕事が終わらない。余計に疲れると分かっていたから、時計を見る気さえ起きなかった。眉間に寄った皺を彼が見たら、指でつつかれるかな。徐々に下りてくる目蓋に逆らう事は出来そうにない。少しで良い、目を瞑って夢の中だけでもジャンに会わせてくれないか。俺はそれだけで満足出来る。
 目に浮かぶジャンの姿。嗚呼、眩しいな。自然と頬が緩むのを我ながら気持ち悪いと思うも、止める気は更々なかった。誰が見ている訳でもないのだから。

「気持ち悪い」

 脳内一人芝居にしては、自棄に現実味を帯びていると思った。もう一度夢に漂おうと目をきつく瞑ると、ぺち、と頬に何かが当たった。訳が分からず薄く瞬きを繰り返して目をゆっくりと開ければ、呆れたように溜め息を吐くジャンが、そこにいた。

「…何の夢見てたんだよ、ダーリン」

 俺は疲れているのか、そうだ疲れているんだ。目を開けたらジャンがいる。これは夢ではないのか、否、夢に戻る気など更々ない。
 頬に当てられた手をそっと取る。正しく満たされる心地に浸るように頬擦りをすれば、もう一度気持ち悪いと罵られた。言いながらも手を離さないでくれるお前が、どうしようもなく愛しいよ、ジャン。




111010
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