―――楽器を弾くお前が好きだ。
 きっと、彼にとっては何の考えもなしにぽろりと零れた言葉。しかし要らないところまで深読みしてしまう。果たして彼の前で楽器をそれ程演奏しただろうか。(もしかしたら酔った勢いでピアノでも弾かされたのかもしれない)仮にそれがあの村での即興演奏を意味しているなら、その時から印象に残っていたと言うのだろうか。
 馬鹿馬鹿しい。自惚れにも程がある。そうお得意の自嘲を交えながら、それでもこうして能動的に足を運んでいる自分が憎かった。身体が勝手に、とはこの事だった。ジャンは喜んでくれるかな。喜んでくれたら良いな。年甲斐もない男を動かすのは、極めて衝動的で盲目的な何かだった。


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