突き付けられたのは、既に頭を擡げ始めていた彼のペニス。眩暈がした。それは急速に俺から思考というものを奪っていく。早く舐めたい。ジャンに気持ち良くなって欲しい。口内に思い切り突っ込まれて、噎せ返りそうになる感覚に溺れたい。鼻腔を擽る匂いは情欲を煽るしかなく、気が付くと手を伸ばしてそれを握っていた。呆れたような声が降ってくるのはお見通し。

「もう、ダーリンは待てが出来ないのかしら」

 そうだよ、だからもっと躾けてくれないか、ハニー。俺の言葉程不毛で不要なものもない。ゆるりと視線を上げれば、ほら、存外上機嫌な顔とご対面。それを肯定と取って、下から上へと舌を這わせていく。片手は袋を緩く揉みながら、もう片方の手は根元を扱いて。反射的に分泌される唾液をだらりと垂らす。ぬちゅぬちゅと立つ音は快感以外の何の要素も持たなかった。
 ねえ、食べても良いかい。言葉を忘れた愚者が目だけでそう訴えると、舐めるような視線が骨の髄まで俺を暴いてくれる。思わず手が震えた。
 顔を近付けて頬擦りする。湧き上がるのは紛れもない慈愛。嗚呼、俺はこんなにもジャンの全てを愛しているんだ。そう消化した音は何よりも甘美に感ぜられた。彼も興奮しているのだろう、そのペニスは先より固さを誇っていた。彼の無言を肯定と決め付けると、ぱくりと口を開けてそれを吸い込んだ。瞬間、くらりと眩暈がした。まただ。ふわりと、鼻腔を擽る匂い。纏わり付いて離れないその馨りが俺を惑わし、狂わせる。




香りにくらくら
(何が正しくて、何が正しくないかなんて判別する頭は疾うに捨ててしまったのだ。残りは彼から齎される全てに喜びを覚えるのみ)





110606
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -