人は恋慕を現す様々な言葉を持ち合わせている。
好き、嫌い、愛している、慕っている、想っている。それなりの関係を築けている相手ならばほとんどの人間を喜ばせる言葉であり、そして吐き続けばそれが真実になる便利なものだ。本人がどう思っていようが、人を謀る事は出来ても量る事は出来ない。人は目には見えない感情を言葉で伝える外の手段を持ち合わせていないのだ。だから瞳が合えば微笑んで、何度も何度も告げる。「愛しているよ、ジャンカルロ」と。
しかし俺はその言葉に嘘偽りはなく、揺るぎなく彼を愛している。彼は組織の人間全員に愛されるべき存在、カポなのだ。CR:5を統べる人間を、敬愛し続けた先代の子胤を、俺が愛さない筈がない。彼の前に障害があれば抹消し、迷う時があれば道標を用意し、彼が崩れる事が無いよう支える。彼が望むものがあればその全てを叶え、欲するなら体だって重ねる。それが俺の仕事であり存在意義だと認識しているから俺は、彼を愛している。

「ラグに引き継いだら直ぐ戻ってくれ。留まるのは危険だ」

電話線を通して俺の声が辿り着く先は想像するに易い真っ赤な光景が拡がっているのだろう。何せ愛しのジャンカルロは自慢の狂犬を連れ立ってその場に赴いたのだから。数分前まで人だったモノがそこらかしこに無造作に横たわり、そして行く行くは跡形もなく消えていく、そんな我々の世界ではよくある状況を想像するのは造作ない。
しかしふと。もしその場に彼がモノとして横たわっていたら俺はどうするのだろうか。そんな思考が過ぎった。今までの俺であれば恐ろしくて頭を振り、馬鹿なことをと脳内から揉み消していた想像の一つ。そう、もしジャンカルロが死んだら。
空っぽになった彼を抱いて泣くのだろうか、はたまた茫然とその場に立ち尽くして何も出来ないのか、それとも他のモノと同じように片付ける事が出来てしまうのだろうか。職務を全うしたファミーリアが手厚く葬られるように、彼の棺を地中へ見送った後は日常が忙しなく過ぎてゆくのだろうか。皆同じなのだろうか。
そしてマッチを擦り、気に入りの煙草を燻らせながら生産性のない妄執に駆られるくらいならば現状でいいではないかと思い直す。俺は彼の為に策を巡らせ、カネを回し、外堀から邪魔する物を排除して彼が描く組織造りの駒の一つなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。それだけだ。

「ジュリオにはイイ息抜きになったかもしれないが、またデカイ金を渡す事になるな」

会話の潤滑油、取るに足らない小言に合わせて上下するトーンが可愛いのだと思う。どんな表情なのか想像できる程変化する口調も可愛いらしいのだと思う。
何故好きなのか。
そんな事考えるだけ無駄だろう。必要とされるのは俺が、ジャンを好きである事実だけ。愛していると実感する根拠だけ。それさえあれば俺はジャンを愛していると発する言葉が真実になる。可愛いジャンカルロ、愛しているよジャンカルロ。俺はお前を愛しているのだ。

「問題ないよ、気を付けて帰っておいで。愛してるよハニー」

俺がそう信じてさえいればそれが真実。




110514

るいさんよりにまんひっとのお祝いに頂きました…!
全力で理想過ぎてつらいですワールドイズベルナルド好き過ぎてつらいでするいさん早く結婚しましょう結婚結婚結婚
えぬなるどで盛り上がれるのは本当にるいさんくらいだと思います。るいさんとるいさんの小説だいすき!
どうもありがとうございましたー!

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