!ベルジャンベル前提ルキーノ+ジャン×ベルナルド
!原作捏造/ただの801
呂律が上手く回らない。目の前の映像はぐにゃりと面白い程に歪んでいた。ただ、ふわふわとしていて気分が良い。可笑しいな、ジャンと一緒に酒を飲んでいただけなのに。それとも浮かれて煽り過ぎたのだろうか。原因を同じく歪んだ思考で探ろうとも、求める答えに行き着く筈もなく。
先から規則正しく何かが聞こえる。何とか耳を凝らして追い掛けると、どうやらそれは自分の声らしかった。手のようなものが、額の辺りに翳される。そうか、映像が不鮮明なのは眼鏡を外されたからだ。眼鏡を外したのは、潰れた俺をジャンが介抱してくれているから。ベッドに寝かされているのも呼吸が荒いのもシャツが乱れているのも気分が良いのも、全部。きっと悪態を吐いている事だろう、それでも見捨てないでくれるのは愛されていると信じて良いのだろう。俺は知っている。ジャンが俺の事を好きで仕方がない事を。嗚呼、俺も愛しているよ、ジャン。今すぐにお前を抱き締めて、キスの雨を降らせたい。歪んだ映像でも見紛う筈はない。その燦々と輝く金色は、お前なんだろう?ジャン。
「あーあ、完全にイッちまってるじゃねえか」
遠くで何やら音がした。聞き慣れた事はある筈だが、それが誰のものだか分からない。どうやら規則的に躯に注がれる快感はそこから生み出されているらしかった。その所為で自分の喉からひっきりなしに声が漏れているのだ。しかしそれを抑えようとは考える事さえ出来なかった。心地好さを追い求めたくて動きに合わせて腰を振る。躯がどうしようもなく疼く。強い快感を求めて、体内を出入りする何かを意識的に締め付けようとするも、脱力した躯はされるがままになるしかなかった。
「いいんだよ、お前も抱きたいって言ってたろ」
翳されていた手が、下りてくる。間抜けにも半開きの唇を触れるか触れないかのところで指がなぞる。俺を感じさせる、ジャンの指だ。ぞくぞくと背筋を震わせて陶酔する。嬉しくなって笑ってみせると、くすりと鼻で笑われた気配がした。あれ、上手く笑えなかったかな。そろそろと指が中に侵入してくるかと思うと、無条件に舌を這わせて口内に引きずり込んでいた。嗚呼、ジャンの指が俺の口の中に。彼のペニスにするように一心不乱にしゃぶると、更に笑みが濃く刻まれたような気がした。ジャンが嬉しいと、俺も嬉しい。喜んでくれるなら、何だってしたい。
「可愛いだろ、クスリでぶっ飛んでても俺に従順で」
「はは、知らなかったぜ、お前がベルナルドを飼い慣らしてるなんてよ」
ジャン、誰と喋っているんだい?俺を差し置いて、他の奴に目を向けるなんて妬けるな。力の入らない手を伸ばして、細腕を掴む。正確には触れると言った方が正しい。ねえ俺だけを見て、ジャン。すると、先よりもぐちゃぐちゃに歪んだ視界の中でこちらに顔が向けられた気がした。次いで、柔らかい声音が掛けられる。
「ダーリン、気分はどう?」
口内から指が取り去られ、唾液が糸を引く。喪失感に喉が鳴るが、変わらず下肢から生み出される快感に翻弄されて。気持ちが良い、と返そうとするも、意味を為さない音だけが喉から溢れてそれさえままならない。ジャン、俺、変なんだ。ふわふわして、何も考えられない。ぱくぱくと口を開閉させていれば俺からの返事がないと思ったのだろうか、ジャンは少しむっとしたように唇を尖らせた気がした。唾液で濡れた指を頬へ滑らせると、甘みを帯びない冷たい声音で耳を擽る。
「へーそんなに気持ち良いなんて、妬けちゃうワ」
「おいジャン、本当に良いのかよ」
「ああいいぜ、後でどろどろになるまで可愛がるから」
「はっ、もうどろどろじゃねえか」
投げ出されていた足がぐいと力任せに折り込まされる。刺激が取り去られると、齎されていた快感は誰かの指だったのだと漸く知った。そして、恐らく先よりも質量と硬度を持った何かがぬるりと宛てがわれる。しかし一体誰の、
散々解されたアヌスへ、徐々に埋め込まれていく。それで突かれたら、きっともっと気持ち良くなれる。先端が内部に入ると内壁が押し広げられる感覚に酔いしれて、思わず腰を揺らして擦り付けていた。早く、動いて欲しい。満たして欲しい。
「おら、しっかり味わえよ」
低い呻り声のような音と共に、一気に内部を穿たれた。自分の声が耳障りな程に大きく響くが、すぐにそれも気にならなくなる。容赦なく前後するそれに嬌声を迸らせる事しか出来ない。僅かに残された冷静な思考とやらが、どうしてこんな事になったのかと問い掛けるも、答えを考える内にその問いさえ何処かへ消えてしまっていた。内部を貫かれる度に意識が遠退いていく。このまま気を失ってしまうなんて御免だ。ジャンには俺で気持ち良くなって欲しい。そう、思いながらも、どうしようもなく気持ちが良い。このまま、イかせて欲しい。もっと奥を、奥を突いて。
「なあ、ルキーノのペニス、気持ち良いのかよ」
陥落していた筈の思考を引き戻す、全く感情の籠もらない声。誰の、だって、ジャン。その音を追おうとどろどろに融解した頭で考えるも、次から次に生み出される強い快感に弄ばれるしかなかった。抵抗しようと躯を捩るも、結果として腰を振っているだけだ。嫌だ、ジャンのじゃなきゃ嫌なんだ。それなのに気持ち良くなってしまっているなんて。
この上ない背徳に躯をぶるぶると震わせながら、どうにか機嫌を損ねないように彼へと手を伸ばす。すると、強い力で手首を掴まれ導かれる。何時の間にか露になっていた、ジャンのペニスへだ。
「ほうらダーリン、イイ顔見せて」
蕩けるような甘い抑揚。激しい愛撫と相俟ってぐちゃぐちゃに追い詰められてゆく。顔の上に跨ったらしいジャンは、目の前へペニスを突き付けた。しゃぶりたくて仕方のない俺を嘲笑うかのように、固くなったそれを頬へと何度も当ててくる。鼻腔を擽るその匂いに眩暈がした。
口を開けて迎え入れようとするも、焦らしているのか中々しゃぶらせてくれない。これ以上どう追い詰めようと言うのだろうか。歪んだ映像が融けていく。最早重力に逆らって手を伸ばす事さえ叶わない俺に、彼はどんな顔をしたのだろうか。
昂ったペニスが口内にねじ込まれる直前。ジャン、と漸く名前を呼べた気がした。それも音になったかどうか確かめる術はない。何故なら俺は、しがない思考を手離してしまったのだから。
110515