「ジャン、愛してるよ」

 温かいコーヒーを一口流し込んだところで。その男は、そうさらりとこっ恥ずかしい台詞を言ってのけた。思わず吹き出しそうになるのを堪えてごくり。今に始まった事ではないが、どうにも慣れない。まあ、慣れてしまったらそれはそれで、俺でなくなってしまうような気がして寂しいのだが。

「…い、いきなり何言い出すんだよ」
「俺にとってはいきなりじゃないさ。常日頃ジャンの事しか考えていないからね」

 知ってるよ、なんて答えれば良かったかな。しかしそう答えるには俺はこいつの事を余り知らないし、こいつも俺を愛せるか不安なのだろう。ばっかみてえ、良い歳した大人二人がこうしてガキみたいに。
 俺を見据える瞳は何処か穏やかで。一瞥だけするつもりだったのに、釘付けにされてしまう程に綺麗だった。ふ、とそれが細められるのを認めて、初めて目を奪われていたと気付く。

「…それで、お前の答えも聞きたいところなんだけどね」
「ダーリンったら、随分と野暮な事聞くのネ」

 そう言ってみせるのはせめてもの強がりというか照れ隠しというか。嫌かい、とでも言いたげな顔をしながらそう言うその男は、臆病で、可愛くて、俺がいないとダメで。そう確認してしまいたくなる気持ちは分からなくない。だって、俺もあんたを、

「愛してる、ベルナルド」




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