俺は、彼が好きなのだと思う。こうして何をしようとも、大した抵抗もせずされるがままになっている筆頭幹部に憐憫を覚える事もなく、欲情しているのだから。ただし彼のそれは俺限定であり、他の人間なら恐らく顔色一つ変えずに殺しているのだろう。(この際やらせてみるのもありかもしれないが)
 だから、こんな貧相な躯を見ても、飽き足らずそれを垂らした肌を見ても高揚する。もっとぐちゃぐちゃにしてやりたいとさえ思うのだ。既に後ろの口は嬉々として蝋燭をくわえ込み、ぎゅうぎゅうと収縮を繰り返している。指でそこをなぞってやれば、期待からか不安からかひ、と悲鳴が漏れた。あ、イイな、それ。もっと、聞きたい。好い加減ただもっともっと強請るのにはうんざりしてたんだ。そんなの、何処の女を捕まえたって出来るってもんだ。望まない快楽をひたすらに強制して、善がり狂う姿を見てみたいと思うのは、ハニーとしては当然の権利だろう?いや、義務だ。
 そのお綺麗な顔目掛けて、蝋燭を傾けてやる。ぱた、ぱた。小さく音を立てて融解されたそれは頬へ、髪へ、眼鏡へ、鼻へ、唇へ。あら、熱さにはもう慣れちゃったかしら?嗚呼、違う。俺が、この心地好い悲鳴に慣れてしまったんだ。人間悲しい生き物ネ。欲しいものが手に入ると更に上のものが欲しくなるんだから。

「ひっ…、ひ…っ、ジャン…ジャン、っや…っ」

 何だよ、ベルナルド。俺、そんな悲痛な声で呼ばれるような事してないぜ。ペニスをがっちがちにさせて、被虐の歓びに浸ってる奴が一体どの口でそんな事を言うのかしら。そうか、そこに欲しいって事か。ごめんね、ダーリン。ハニーの気が利かないばっかりに、寂しい思いさせて。もっと深くまで、愛して欲しいんだよな、言わなくても分かってるぜ。だって俺、お前が好きなんだから。
 躯をがたがたと震わせながら、それでも俺の表情を窺おうと見上げてくる。はは、そんな汚れた眼鏡じゃ何も見えないだろうに、頑張るねえ。あんたのそういうところ、嫌いじゃない。所在なさげにゆらゆらと揺れるそれも、まるでそこに行きたがっているようにさえ見えた。使いものにならなくなったら困るが、その時はその時だ。頬が緩むのを抑えられないまま、屹立したそれに、ゆっくりと蝋を垂らした。

「ひ、あああああぁっ」
「…ベルナルド、痛い?気持ちイイ?どっち?」

 痛みにのたうち回ってもがきたいだろうに、シーツを爪が白くなるまで掴んでひたすらに耐えるベルナルド。俺の声など聞こえていないようだが、ただひたすらに全てを享受する彼は、本当にどうしようもない人間だと思う。愛しくて、仕方がない。上気した頬も、衰える事を知らないペニスも、全てが愛しい。
 鉾は変えず蝋燭を傾けながら、刺さったままのもう一本のそれも、無理矢理抜き差ししてやった。ぎちぎちと、狭い体内を動くそれ。あ、血、出るかな。そうしたら泣くかな。なんて。

「なあ、聞いてるー?ほら、気持ちイイんだろ?ベルナルド。言えよ」
「はああっ、あっ、ん…っ、気持ち、ああああっ!」
「だろうなー、こんなペニスおっ勃たせて気持ち良くない訳ねーよなあ」

 とろとろ。とろとろ。なあ、俺は一切触れてないのに、それでもお前はこんなに気持ち良くなっちまうんだな。俺にされている、ってだけで。背筋をぞくぞくと抜ける感覚に酔いながら、耳へ唇を寄せて、甘い声音を鳴らしてやった。

「ダーリン、俺に捨てられたらだあれも拾ってくれないな」
「ひっ…や、っ…捨て、捨てない、で…、ジャン…っ」
「さあどうしようかなー」

 そのお綺麗な筈の顔を見据えた。こびり付いているのはもう蝋なのか涙なのか唾液なのか分からない。ぐちゃぐちゃ。しかしそれを気にする余裕もなく、ただ捨てられるのを畏怖した彼は、救いを求めて腕を伸ばしてきた。震えちゃって、可愛いねえ。そこで初めて俺は、その腕を取り彼に触れてやった。勿論、魔法の言葉も忘れない。だって俺は、この男が、

「あんたを愛してあげられるのは俺だけだぜ、ベルナルド」




110303
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -